2024年5月7日火曜日

コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯

■2017/11/06 日本馬のレベルは高く、世界に通用して当然!
■2017/11/06 コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯
■2018/07/23 ヨーロッパで1位と2位になったポップロックとコスモバルク
■2018/07/23 コスモバルクは種牡馬入りすれば成功した?その血統は?


■2017/11/06 日本馬のレベルは高く、世界に通用して当然!

 児玉 敬さんは、塚尾牧場(静内)、鍋掛牧場(栃木)と国内での経験を積んだ後、アメリカのサンタアニタ競馬場(カリフォルニア)に行っています。
 その後、今度はアイルランドに行って、この国にはまりました。ラッド、トラベリングヘッドラット、アシスタントトレーナーを経験しアイルランド調教師免許を取得します。
 ところが、3シーズンの調教師活動で資金が尽きて、一旦免許を返納。アイルランドではよくあることで、儲からないどころか、お金が減りまくるのです。
   Enjoy Ruffian 2010年2月号のシャムロックの草原から〈19〉は、それから5年、アイルランドセリ会社Goffs日本代理人だった頃の話であり、なおかつ調教師に再挑戦する経緯について書かれたものでした。そして、これにコスモバルクが大きく関係していたのです。

 ただ、その前に、日本の馬は海外で通用するという話。この話は、ビッグレッドグループの会報ではよく出てきます。
  児玉さんもそういう思いがあったようで、ある日、JRAワールドスーパージョッキーシリーズに参戦したアイルランドのミック・キネーン騎手の世話係として帰国した際に、騎手らとそういう話をしました。
 話を聞いたのは、 キネーン騎手始めライアン・ムーア騎手(英国)、ダグラス・ホワイト騎手(香港)、クレッグ・ウィリアムス騎手(豪州)など。彼らの見解は概ね以下のようなものだったそうです。

「日本産馬のレベルが欧州産馬のレベルと遜色がないこと、これはもう疑いようがない。勿論欧州には世界トップレベルにある超一流ホースが何頭もいる。そのレベルの馬達に欧州の地で日本馬が勝つというのは多分至難の技だろう。でもな、そんな欧州のスーパーホース達が日本のトップホース達を敵にしてジャパンカップで勝つことだって同じように至難の技だろう。(中略)
競馬の流れ、馬場、欧州と日本では大きく競馬が違うということは確かだ、でも欧州産でありながら欧州競馬より日本競馬に適しているタイプの馬がいると思えるように、日本にだって日本の競馬より欧州でより力を発揮するタイプの馬が存在するはずだ。そんなタイプの日本産馬達が欧州の競馬を舞台に日常的な活躍をする事が驚くべき事とは思わないし、世界中で競走馬の流通が日常的になっている現代競馬で、これほど高いレベルにある日本産馬が適性を生かせる場所を求めて世界に散らばっていかないほうが不思議なくらいだ」


■2017/11/06 コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯

 さて、コスモバルクが登場するのはこの後です。
 児玉さんは年末、岡田繁幸前社長とご飯を食べたそうです。児玉さんは熱く語るタイプっぽく、いろいろと話があったのか、話し足らずにその後スナックに場所を移して話していました。
 そこで、岡田さんが 「今週末の有馬記念で8着までに来なかったらバルクは引退させることにしている。まだまだ元気だし、本当はもっともっと頑張らせてやりたいんだけど…」と言ったんだそうです。

 これを聞いた児玉さんは、 「バルクならまだまだ欧州でやれると思います。シンガポールで国際G1まで取ったバルクが欧州の環境でもう一度元気に世界に挑戦するのを見てみたいです。アイルランドには8歳9歳で競馬を盛り上げているトップクラスの馬は沢山います」と熱弁。
 さらに、以下のようにバルクのアイルランド移籍を進言してしまいました。

「それに年齢を重ねたアイルランドの馬達に、苦痛の中で過酷な競走生活を強いられているという悲壮感を僕は決して感じません。
賞金的魅力はないかもしれません、でも、バルクに日本馬の本当の強さを欧州の人々の心に広く伝える開拓者として、もし海を渡ってもらえる事が出来たら、どんなに嬉しいかわかりません」

 はっきりと書いていないのですが、どうもこの流れで児玉さんが再び調教師をやって、コスモバルクを見るということになったみたいです。


■2018/07/23 ヨーロッパで1位と2位になったポップロックとコスモバルク

  Enjoy Ruffian 2010年4月号 シャムロックの草原からによると、この時点で児玉敬さんの調教師再開に予想されていたメンバーは、コスモバルク、ポップロック、セイウンヒーローそしてピサノティファニーの4頭。
 アイルランドの競馬主催者HorseRacingIrelandにバルクとポップの登録について話をした際、この4頭について、以下のようにからかわれたそうです。

「タカシ、当たり前のことだけどな、この2頭、登録と同時に間違いなく現在の欧州現役馬賞金ランキング1位2位になるぞ! お前も派手に舞い戻ってきたなぁ」
 
 そうか、そうなのか!これは全く考えたことがありませんでした。ポップロックは5億1,118万円 、コスモバルクは4億8,216万円を稼いだ馬です。日本は賞金体系が高額というだけでなく、ヨーロッパでは早く引退する馬も多いでしょう。そう考えると、世界の現役賞金ランキングでは、日本馬が常に上位なのかもしれませんね。


■2018/07/23 コスモバルクは種牡馬入りすれば成功した?その血統は?

 なお、ピサノティファニーは地方1勝、セイウンヒーローは中央1勝と、競走成績はふるいませんしたが、この2頭は「超良血」です。こちらも、からかわれたそうです。

「お前、このピサノティファニーっていう牝馬はアメリカのトップスタリオン、タピットの妹じゃないか? しかもこのセイウンヒーローってヘクタープロテクター、ボスラシャム、シャンハイの弟か?」

 ピサノティファニーはこの2010年シーズンを児玉敬厩舎で走り、2011年には昨年の欧州年度代表馬シーザスターズとの交配を予定。これまたすごい馬ですね。
 またセイウンヒーローは同じく2010年シーズンをアイルランドで走ったのち、南米はチリで種牡馬入りの予定でした。
 この他、同じくチリで種牡馬入りが決まっている重賞勝ち馬のステキシンスケクンも現役最後の数レースを僕の厩舎で迎える予定だったとのこと。ステキシンスケクンは逃げ先行が多かった馬で、結構応援していました。だいぶ後になって、馬名の由来がヤクザ問題の島田紳助と知って嫌になったんですけど…。

 児玉敬さんは調教師再開の動機として、"「日本馬は強い」。世界を相手にそれを証明してみたい。日本に存在する、忘れられてしまうかもしれない世界的良血馬にもっと色々な可能性を持ってもらいたい"などといったことを挙げていました。
 ポップロックは後にチェコで種牡馬入りしましたけど、この馬の場合は 確か現地で走ったおかげで決まったんじゃなかったかなぁ。どうでしたっけ?その話も裏取れたら追加します。

 コスモバルクの方はアイルランドに行ったものの、結局、怪我で出走できず、種牡馬としてお呼ばれもしませんでした。
 「種牡馬になれば成功したのにビッグレッドファームは馬鹿」という人も多いのですけど、先祖に中央競馬の重賞勝ち馬がいない血統ですからね。セイウンヒーローとは逆に、かなり珍しいレベルで血統の悪い馬ですので、客観的に見て成功確率が高いと思われません。これは繁殖牝馬が集まらない理由にもなります。妥当な判断だったでしょう。
 ちなみにコスモバルクの父の ザグレブもそれまで日本では目立った産駒を出せなかったために、生まれ故郷のアイルランドに再輸出されたという馬でした。
 でも、逆に言えば、こんな血統から活躍する馬を見つけてきて育て上げたのですから、すごいですね。