2024年5月10日金曜日

ソエを発症した馬は成長する・才能があるは迷信で科学的根拠なし?

■2017/09/04 ソエを発症した馬は成長する・才能があるは迷信で科学的根拠なし?
■2023/03/06 ついに笹針、焼烙、ブリスターが禁止!科学的根拠がなく虐待だった…


■2017/09/04 ソエを発症した馬は成長する・才能があるは迷信で科学的根拠なし?

 私の出資馬の1頭がソエを発症したときに、調べた話。

 ソエというのは、管骨骨膜炎のこと。骨が完全に化骨していない状態に強い調教を行うと、管骨(第3中手骨)の前面で炎症を起こすことがあるため、若い馬に多く見られます。
 初期であれば運動を軽くして、患部を冷却することにより治癒。しかし、重症になると腫れ、骨瘤状となり激しい疼痛、跛行を伴うことになります。さらに重度となると骨瘤部に亀裂骨折(皿状骨折)を発症することもあるそうです。
(ソエ(競馬用語辞典) JRAより)

 ソエはむしろ良いことだと聞いたことがあります。検索してみると、能力が高い馬はソエになりやすいとか、ソエから回復した馬はスピード能力が高まるなどと言われ、昔は厩舎で赤飯を炊く習慣もあったそうです。
 ただ、このことを書いていた“ソエ”について - とりあえず一口馬主の楽しいこと(2010-05-08 13:30:36)によると、「全くの迷信」だそうな。ショックを受けました。
 気にして、科学的根拠などで検索したものの、ほとんど情報がありませんでした。

 こちらによると、 原因がはっきりしていないため、即効性のある治療法が確立されておらず。なので、治療法も今のところ科学的根拠なしだそうです。
 治療法には、 “焼烙治療”や、“ブリスター治療”といったものがあります、このうち、 “焼烙治療”は焼きゴテを当てて火傷をさせ、その火傷の回復過程がソエの良化を後押しすることを期待するという虐待っぽいもので、さすがに今はあまりないそうです。
  ただ、“ブリスター治療”も似たような発想。薬品を使って皮膚を爛れさせるというものでした。

  一方、現在主流になっている治療方法が“ショックウェーブ治療”で、こちらは一見科学的。ショックウェーブ(衝撃波)によって細胞を刺激し、新陳代謝に変化を起こさせるというものでした。
  正直私はこれも疑似科学臭いと感じたのですが、2000年以前から人間に対する治療法として確立されており、臨床データも揃っているといいます。

 「それほど重い病気ではなく回復後は競争能力にほとんど影響がない」のであまり気にすることはないのですが、ソエを発症している間は調教やレースなどを思い通りにできません。
 発症しないにこしたことがなく、特にメリットのようなものはないようでした。


■2023/03/06 ついに笹針、焼烙、ブリスターが禁止!科学的根拠がなく虐待だった…

 前回書いた中で出てきた、ソエの治療法として、科学的根拠がないのに行われていたという「焼烙治療」や「ブリスター」。これらは、後に禁止されていたようです。
 他の禁止された治療法とセットで、<4月から笹針、焼烙、ブリスターが禁止【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】>(2022年4月22日 06時00分)という記事の中で出てきていました。

<あまり表だってアナウンスはされていないのだが、4月1日から中央競馬のルールが一部改正。JRA登録馬について、退厩時も含めて一部の“治療”が禁止された。具体的には笹針、焼烙、ブリスターなどである>
https://www.chunichi.co.jp/article/457469

 作者の獣医師記者・若原さんは、<ソエが出るというのはそれだけ馬に推進力があるとの理解で、ソエが出たのをめでたがって厩舎で赤飯を炊くという習慣もあったようだ>ということで、やはりソエが良いこと説の話を出していました。しかし、これはもう「かなり昔の話」だといいます。
 前回書いたように、これらは科学的根拠なし。今回セットになっていた「笹針」も似たような科学的根拠のない理論に基づいているらしく、以下のような書き方をしていました。

<焼烙は焼きごてを使い表面を熱で焼く。ブリスターは強力な発泡剤を使って、表面を化学的に焼く。どちらも、患部にあえて急性炎症を引き起こし、その治癒過程で患部にあった慢性炎症を道連れ的に治すという理論背景が言われていた。
 と、ここまで書いて、お気づきの読者もいるかもしれない。これ、笹針の原稿で、現在では否定的にみられていると紹介した理論背景とまったく相同だ。笹針が科学的には効果が認められないのと同様、ソエに対する焼烙もブリスターも、その効果は、いまや否定的な見方が主流になった。>

 ただし、ブリスターはかなり最近まで信じられていた模様。焼烙が下火になった後、ブリスターが幅を利かせるようになって、5~6年くらい前までは科学的な手法に積極的な某大手生産者もしばしば使っていたらしいといいます。ただ、そのブリスターも下火になっていたという流れでした。
 それでも、完全に撲滅されてはおらず、一部ではどちらも継続して使われていた模様。今回の禁止措置で、今度こそはっきりと撲滅させようということでしょうね。
 記事では、最後に<効果がなければ、馬の皮膚を焼いて痛い思いをさせるだけ。動物虐待との批判も避けられまい。これらの禁止は競走馬の福祉向上を一歩進めるルール改正と理解できる>と書いていました。