2024年2月13日火曜日

親子で主取りでスペルミスだった米三冠馬アメリカンファラオ

■2019/08/20 やり方に問題あり!アメリカの三冠が難しい理由とは…?
■2019/08/20 セリに出されて主取りになっていたアメリカンファラオ親子
■2019/08/20 歴史に残る超名馬なのに、名前はスペルミスだった!
■2019/08/20 BCジュヴェナイルに出なかったのに最優秀2歳牡馬に選出
■2022/11/14 意外に芝でも走る印象のアメリカンファラオ産駒、データ見てびっくり!


■2019/08/20 やり方に問題あり!アメリカの三冠が難しい理由とは…?

 もう今後は生まれないんじゃないかと思っていた米三冠馬。アメリカンファラオが2015年に37年ぶりとなる三冠馬になりました。その後はすぐ2018年にジャスティファイが三冠を達成しており、不思議な感じですね。

 アメリカの三冠が難しいのは、短期集中開催のためでしょう。典型的なものとしては、三冠まであと一歩となった二冠馬が最後のベルモントSで、休んでいて元気いっぱいの馬に敗れるというパターン。ズルいような気がするものの、そもそもスケジュールに無理がありますね。中1週、中2週というキツすぎるスケジュールの三冠です。

 37年ぶりとなる三冠馬となったアメリカンファラオのケースでも、ベルモントSに出走した他の7頭で三冠すべてに出走した馬はいませんでした。
 Our Pleasure2015年8月号 で解説していた秋山響さんは、「米三冠を阻止しようと狙い澄ましてフレッシュな状態でG1ベルモントSに臨んだライバルを全く寄せ付けなかった」としており、この点はもっと強調されていい、つまり、評価されて良いとしていました。

■2019/08/20 セリに出されて主取りになっていたアメリカンファラオ親子

  歴史的な馬になったアメリカンファラオですけど、いろいろと妙なエピソードがあります。
 馬主は、飲料事業で財を成したアーメド・ザヤット(名義はザヤットステーブルズ)さん。自家生産馬で、父パイオニアオブザナイルはザヤットが所有してG1サンタアニタダービーを制し、G1ケンタッキーダービーでも2着に入った馬。父をさかのぼっていくと、エンパイアメーカー、アンブライドルド、ファピアノ、ミスタープロスペクターとなります。アンブライドルドの系統は近年、超名馬を出してきますね。
 
   一方、母リトルプリンセスエマはなんと未勝利。ただ、怪我のためということですので、本当はもっと強かったのかも。この馬もアーメド・ザヤットさんの末娘の名前がつけられたザヤットさんの所有馬だったそうです。
 ところが、 アメリカンファラオは1歳時にサラトガで行われたファシグティプトン社8月セールに上場させて、主取りとなっています。あまり期待されていなかったのかもしれません。あやうく 危うく将来の三冠馬を手放すところでした。
 ただ、主取りと言っても買い手がつかなかったわけではなく、 ザヤットさんが考えていたほど値段が上がらなかったことで、30万ドルでザヤットさんの代理人が買ったんだとのこと。なので、30万ドル以上の価値があるとは考えていたわけで、全く期待されていなかったということでもないとも言えそうです。
  Wikipediaによれば、 競りの数週間前に脚をぶつけたためセールの際に小さなコブがまだ残っており、これが入札者に購入を躊躇させる一因となったとのこと。また、ザヤットは有望な仔馬は100万ドル以下では売らないとしており、100万ドル以上の価値を感じてたんですね。十分評価されていた感じ。
 また、2007年のセールでは父のパイオニアオブザナイルも同じく29万ドルで買い戻しているということで、ここで売られていたとしても、やはりアメリカンファラオは誕生していなかったでしょう。



 ■2019/08/20 歴史に残る超名馬なのに、名前はスペルミスだった!

 その他にもへんてこな話なのが、 馬名の欧文表記であるAmericanPharoahの“Pharoah”は“Pharaoh”(古代エジプトの王の称号であるファラオの意味)の良くあるスペル間違いで、後半のoaという並びはaoが正しいということ。スペルミスの馬が三冠馬になっていました!

 Wikipediaでは、アメリカンファラオの名は、父がパイオニアオブザナイル、母父がヤンキージェントルマン(アメリカ人の紳士)であることとオーナーがアメリカ在住のエジプト人であることから付けられたが、電子登録の際に間違えたためとの説明です。
 ただ、秋山響さんはもう少し詳しい説明。この名前は公募の結果選ばれたもので、ザヤット側は応募者のスペル間違いに気がつかず、そのまま米ジョッキークラブに馬名を申請してしまったとのこと。公募であり、応募者の時点で間違っていたようです。

 そして、ジョッキークラブ側にスペルチェックの義務はないため、そのまま審査を通過してしまったというわけ。日本でも活躍馬がトンデモナイ名前になったことありますね。ここらへんは少し工夫するだけで改善できそうなんですけど…。

 ■2019/08/20 BCジュヴェナイルに出なかったのに最優秀2歳牡馬に選出

 また、競走成績などもおもしろいですね。 2歳8月にデビューはまさかの5着。競馬場の喧噪を気にするところを見せたとされていますが、確か日本では新馬戦で負けて三冠馬(ダービー馬だったかな?)になるのは珍しいといった話があったと思います。
 彼の場合、ブリンカーが逆効果だった模様。で、音に敏感な面をカバーするため耳栓を装着して2 戦目に行ったのですが、これがなんといきなりG1挑戦。日本では無理ですね。で、このG1デルマーフューチュリティ(AW7f)で初勝利。続くG1フロントランナーS(ダ8.5f)も制しています。
 そして、おもしろいのが、期待されたG1BCジュヴェナイルは、レースを目前にして左前肢を大きく挫傷して回避になってしまったのに、米最優秀2歳牡馬に選出されたこと。
  回避したG1BCジュヴェナイルはテキサスレッドが6馬身半差で圧勝していたんですが、このテキサスレッドはG1フロントランナーSでアメリカンフェローから約5馬身も離された3着に完敗していた馬だったのです。この結果を受けてアメリカンファラオの評価は相対的に上昇したというわけ。で、実際、強くて三冠馬になったんですね。
 日本の場合は2歳牡馬G1が一つしかない状態が長く、牝馬は今でも一つ。なので、仕方ないのかもしれませんけど、G1を勝ったら最優秀2歳馬という感じになっており、私は不満でした。G1で負けても能力的には上…ってパターンがあると思うんですよね。アメリカンファラオの場合は無冠ではないのでケースが異なるのですけど、こういう柔軟性が日本にもほしいと個人的には思います。

  ■2022/11/14 意外に芝でも走る印象のアメリカンファラオ産駒、データ見てびっくり!

 アメリカンファラオ(American Pharoah)産駒はアメリカのダートでこそ活きるものであり、日本の馬場では合わないんじゃないか?と言われつつも、それなりに日本でも活躍馬を出してきますね。ダービーまでは芝偏重でダート軽視という、日本独特のやり方のせいで芝にも出走しているのですが、その芝でもかなり走る馬が出ており、驚きます。

 ただし、当たり外れは大きい感じ。2022/11/14時点で3歳以上のアメリカンファラオ産駒は47頭いますが、1億円以上は2頭のみ。もう1頭1億円行けそうな馬がいますけど、マル外としては特別多いわけではないかもしれません。ここらへんは私の当てずっぽうで言ってますので、本当なら検証する必要がありますけどね。

カフェファラオ     牡     2017    38,879.50
ダノンファラオ     牡     2017    16,690.00
リフレイム     牝     2018    8,468.30

 代表産駒カフェファラオは、最初からダート。圧倒的な走りで連勝し、歴史的名馬か?と期待されたのですが、負けるときには不甲斐なくころっと負けるのも特徴。妙に親近感が増しちゃう馬です。
 このころっと負けるせいで、馬場の得意不得意が言われていたんですけどどうでしょうね。性格の問題かもしれません。
 前述の通り、芝でもやれる馬がいるせいか、何度か芝もチャレンジしています。ただ、箸にも棒にもかからない感じで、彼はダメみたいですね。

 カフェファラオと同じ冠名+ファラオというわかりやすい命名であるダノンファラオも1億円超えの代表産駒。彼は今のところダート一筋となっています。

 現在3位リフレイムはいろいろと上記2頭とタイプが違うのがおもしろいところ。まず2頭と違って牝馬。命名もファラオを使わないリフレイムで、「再構成する」という意味です。母はCareless Jewel(直訳だと「不注意な宝石」という不思議なネーミング)であり、母名由来でもなさそう。謎です。
 馬名は良いとして、最も特徴的なのは完全な芝馬として出世してきたこと。こちらは逆にダートを試す…といった感じで今後路線変更する可能性があるものの、5つの勝ち星をすべて芝であげています。
 血統を見てみると、母父はTapit。Tapitも芝で勝つ馬は出るものの、基本はダートですね。芝13勝、ダート76勝となています。シアトルスルー、A.P. Indyから続くラインですので、芝でもある程度走るイメージはありますけどね。
 アンブライドルド系であるアメリカンファラオ(American Pharoah)産駒も見てみると、芝6勝、ダート33勝で圧倒的にダート。というか、芝6勝のうち5勝をリフレイム1頭であげていることになるので、他の馬はほぼ全く勝てていませんでしたわ。「芝でも走る」というイメージは、リフレイム1頭のために勘違いしていただけのようで衝撃です。