2024年11月26日火曜日

競走馬の引退が納得できない? 怪我・病気、3回連続9着以下、タイムオーバー

■2015/12/13 競走馬の引退が納得できない? 怪我・病気、3回連続9着以下、タイムオーバー
■2022/06/12 引退かどうかで揉める怪我…ただ「競走能力喪失」なら納得できる理由に


■2015/12/13 競走馬の引退が納得できない? 怪我・病気、3回連続9着以下、タイムオーバー

 岡田紘和ラフィアン社長によるEnjoy Ruffiaのコラム Bell The HORSE、2009年3月号は、「競走馬の引退時期について」というもの。競走馬の引退の決め方についての説明がありました。
 最初に、"ご存じのように、本賞金は1着~5着までの馬に、本賞金に準ずる出走奨励金は6着~8着(重賞競走は10着まで)の馬に交付されます"とあったものの、これは普通の馬券だけを買うファンだと、知らない人が多いと思われます。
 ただ、この出走奨励金は当然ながら本賞金より少なくなり、これだけで稼げるというものではありません。

<出走の意思があってもなかなか希望のレースに使えず、1ヶ月以上レース間隔が空くことが珍しくありません。また、出走できても16頭立てのいわゆるフルゲートのレースが多い中、半分より前に来なければその月の預託料さえ賄えないのが、今の厳しい現状です。これらの賞金が交付されない9着以下が続くと経費ばかり嵩むのでほぼ引退になります。基本は特別な不利もなく3回連続9着以下になると引退としていますが、例外も沢山あります>

 "半分より前に来なければその月の預託料さえ賄えない"とありましたが、これは飽くまで「その月の預託料」。1年全部厩舎にいるわけには行かず、当然レースに出ない時期もありますから、「その月の預託料」だけではマイナスです。
 さらに預託料をすべて支払えたとしても、最初に支払った出資金は全く戻ってくる当てがないということになります。もっと活躍しないと赤字削減にはなりません。このように厳しい条件ですので、大半の馬は赤字になります。

 「3回連続9着以下」以外の特殊な引退のケースについて例については、以下のようなお話がありあmした。

(1)夏の3歳未勝利競走で何とか勝利を収めたが、その時点で全治9か月以上の怪我をした場合、これは調教師とも相談の上500万下競走で通用しそうな馬であれば現役続行ですが、そうでなければ引退させます。
(2)タイムオーバーになった場合、競走能力が原因だと判断すれば引退させることがあります。しかし、この判断も意外に難しく、過去にデビュー戦でタイムオーバーになった馬が3勝以上したこともあります。
(3)休み明け9着が2回続き、次の出走が5週間以上先になりそうな場合、その2戦が完調に近い状態での出走であれば引退させることがあります。
(4)オープンクラスの馬が3回以上10着以下の場合でも、引退させないことがあります。なぜなら、賞金が高額なため5着以内に入れば十分にペイする可能性があるからです。

 大抵は「引退するのに納得できない!」という不満が出資者に多いと思われますが、一般的には引退が正解で、引退した方がプラスになる方が多いです。前述の通り、そもそもほとんどの馬が赤字。現役を続けるだけで赤字が増えていく一方なのに対し、好走する確率は低いですからね。
 以前、中央を引退したクラブ馬が地方で何勝もした!と騒いでいる人がいたものの、現在の地方と中央ではさまざまな差が非常に大きくなっています。それくらいでは、中央で勝てたかどうかも怪しいです。
 これは勝利して出戻りする馬が必ず確勝級と言えるかどうかを考えてもわかるでしょうし、中央で凡走した馬が地方で好走する確率を見てもわかるでしょう。

 なお、岡田紘和さんは、"もっと難しいのは「馬体状況」の判断"だとしていました。競走馬が引退を考えるケースで、怪我は多いものの、これがどの程度のリスクかという見極めは、専門家でも判断が割れるようなのです。

-----引用 ここから-----
 高齢になればなるほど、怪我の回復が遅くなったり、慢性痛により歩様が悪化したりします。痛みはそのきっかけとなる怪我や病気があるのですが、その怪我や病気が治っても神経系統に異常が残り痛みを感じる状態が続くのが慢性痛の主な原因だそうです。
 また、獣医師の判断もまちまちですので、関係者全員が納得することは少ないのです。例え全治3か月の骨折であってもその馬の骨質が脆ければ再発の可能性が高いので、下級クラスの馬であれば引退させることもあります。
 その他に喘鳴症(ぜいめいしょう・狭義の「喉鳴り」)を診断するには、内視鏡で披裂軟骨の開帳不良を確認しますが、運動後の呼吸時に検査してもわからない時もあるので、トレッドミルで馬を走らせながら検査するのがベストです。しかし、トレッドミルで走らせるには怪我をする多少のリスクがあるので、あまり行われていません。また、あまり音がしない喘鳴症もあるそうです。そして、喘鳴症が重度だとなると手術をするのですが、ある程度馬体が成長した2歳夏以降のほうが成功率は高くなると言われているものの、まだ成功率(現在のところ60%程度でしょうか)はそれほど高くありません。
-----引用 ここまで-----

 病気の中では、腰フラは即引退である意味わかりやすいです。出資馬がこれで2頭引退したことがありますが、腰フラは原因不明で現在のところ対処法がないために、現役続行という選択肢は取られない感じです。
 ただ、こういう納得できる(諦められる)怪我・病気だけとは限りません。
 以前、出資していた別の馬が怪我をしたとき、クラブは引退させようとしていたものの、調教師が通用するとして是非ともと現役続行させました。しかし、長期休養明けの後は、結局全く活躍せずに引退へ。結果的には赤字だけたくさん増えた形です。
 基本的には、怪我した時点で現役続行はかなりのギャンブルだと考えていた方が良いと思います。



■2022/06/12 引退かどうかで揉める怪我…ただ「競走能力喪失」なら納得できる理由に

 同じようなテーマの話を…と思ったものの見つからなかったので、納得できる引退理由のケースをひとつ紹介。言葉のインパクトも強烈な「競走能力喪失」という理由のケースです。
 以下の<骨折で競走能力喪失…ヨカヨカ引退がトレンド入り「九州産馬初のG1制覇も夢じゃないと思ったのに」「残念だけど…命あって良かった」:中日スポーツ・東京中日スポーツ 2021年9月22日)は、POGでも指名したような記憶があるヨカヨカの話です。

<8月のG3北九州記念で豪快に差し切り、熊本県産馬として初の重賞制覇を成し遂げたヨカヨカ(牝3歳)が22日、左第1指節種子骨を骨折、競走能力喪失と診断されたことが分かった。>
<22日朝の調教後、地下場道で暴れたことが骨折の原因とされるヨカヨカ。「切ないな…本当に担当者さんのお気持ちを察するとなんともいえない」「(GI)スプリンターズステークスで走る姿を見たかった…」「ヨカヨカ残念だけど…命あって良かった…子供、楽しみにしてます」「予後不良にならなくて本当に良かったと思ってる」「引退は悲しいけど、余生をゆっくり過ごしてね。ヨカヨカ感動をありがとう」などのコメントが相次いだ>
https://www.chunichi.co.jp/article/334790

 あと、去年のダービーを見返していて、POG馬で牝馬なのにダービーに出走したサトノレイナスがそういやその後走ってないな…と思ったら放牧中に骨折して休養、復帰を模索したものの引退していました。
 引退発表はダービーの翌年の2月ということで、すぐに引退せずに粘った感じがあり、これもあまり異論が出そうにないケースでしょう。コメント欄でも異論は出ていない感じでした。
 牝馬の場合は、繁殖があるので、サクッと引退するケースが多いですし、かなり頑張った方だと思います。2月ですから、今年の繁殖に上がるかどうか決める…というタイミングでの決断でしょうね。

<21年桜花賞など2度のG1・2着があるサトノレイナス(牝4歳、美浦・国枝)が、9日付けで競走馬登録を抹消したことが10日までに分かった。通算成績は5戦2勝。
 同馬はデビュー2連勝で臨んだ20年阪神JF、翌年の桜花賞で、白毛馬ソダシと激闘を繰り広げたがいずれも2着惜敗。その後は牝馬ながらダービーに挑戦。07年ウオッカ以来、14年ぶりの牝馬Vを目指したものの、5着に終わった。
 その後は放牧中に右トモを骨折して休養。結果としてダービーがラストランとなった>
(サトノレイナスが引退・繁殖入りへ ソダシと2度の激闘 国枝師「復帰がかなわず残念」 | 競馬ニュース - netkeiba.com 2022年02月10日より)
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=199573



2024年11月1日金曜日

エイダン・オブライエンはジャパンC軽視? 日本人もバリードイルで働いているのに…

■2018/11/27  エイダン・オブライエンはジャパンC軽視? 日本人もバリードイルで働いているのに…
■2025/04/22 エイダン・オブライエン調教師が初来日、ジャパンC参戦で


■2018/11/27 エイダン・オブライエンはジャパンC軽視? 日本人もバリードイルで働いているのに…

 ジャパンカップの出馬表を見ていて、エイダン・オブライエン調教師の名前を発見。アイルランドダービー馬のカプリです。
 それでふと思ったのですけど、なぜかエイダン・オブライエン調教師はジャパンカップにほとんど来ていないのでは?ということ。検索してみると、実際、Wikipediaでも「管理馬を日本に遠征させることはほとんどない」と書かれていました。Wikipedia執筆時点では3頭のみ。カプリを入れても4頭のみという少なさです。

 なお、Wikipediaによると、バリードイル調教場では日本人スタッフも数名働いているとのこと。知りませんでしたわ。
 ただ、私はちょっと勘違いしていたかも。バリードイル= エイダン・オブライエン=クールモアってことではなくて、「バリードイルは、クールモアグループを中心に、一流馬が多数管理・調教 されている アイルランドの調教場」といった説明になっているのを見かけました。
 なので、日本人スタッフというのは、エイダン・オブライエン調教師のもとで働いているかどうか、これだけの文章ではわからないのかもしれません。

 検索してみると、私がよく紹介しているアイルランドの カラ競馬場の児玉敬 さんなどともに紹介されているところがありました。本当にエイダン・オブライエンさんの下で働いている人がいるみたいです。下記以外にも、元・エイダン=オブライエン厩舎所属助手で本木剛介という方がいたとのこと。

<アイルランド>
・児玉敬(調教師。ポップロック、シャドウゲイト、キングストレイルなどを担当して欧州種牡馬入りを後押ししている)
・柘植要(トラックライダー。バリードイル所属、エイダン・オブライエン師の下でガリレオなど数多くの名馬の調教を手掛ける)
・草野涼(トラックライダー。草野太郎騎手の弟。バリードイル所属。)
・原田千秋(アシスタントトレーナー。児玉厩舎からバリードイル所属に。)
・塚田竜(アシスタントトレーナー)
(『サラブレ』10月号 海外で活躍する現役日本人ホースマン特集 - 座布団が行司にクリーンヒット 2014-01-10 より)

 ジャパンカップは賞金が高いですし、 世界中でG1を勝ちまくっているエイダン・オブライエン調教師が嫌う理由はなさそうです。それなのになぜあまり来ないのか?というのは、不思議ですね。理由はわかりません。
 私の勝手な想像になりますけど、勝利にこだわる方ですので、日本の競馬に合わないとして狙わないことが多いのかも。日本人は凱旋門賞ばかりにこだわるものの、私は日本馬が合わないケースが多いと感じており、本来、相性は非常に大切なものです。


■2025/04/22 エイダン・オブライエン調教師が初来日、ジャパンC参戦で

 ジャパンC軽視などとも言われたエイダン・オブライエン調教師ですが、2024年は調教馬が参戦しただけでなく、初来日も果たしました。

・初来日のA・オブライエン調教師が美浦トレセンを電撃訪問 日本の施設を絶賛「ただただ驚きです」 | 競馬ニュース・特集なら東スポ競馬(2024/11/20 (水) 12:49)
<初めての美浦トレセンにA・オブライエン師は「スケールが大きく、施設が充実している点にただただ驚きです」と舌を巻いた。また、同師は来日そのものが初めて。日本の印象についても「おもてなしの心があり、着いた瞬間から居心地がいいと感じました」と満足げな様子だった。
 同師を案内した尾関調教師は「昨日もしかしたら来るかも、と連絡がありました。ウォーキングマシン、洗い場、馬房の中など紹介して、ミストや換気扇とか設備について説明しました。『中にミストが入っていていいね』みたいな感じで言っていた。(記念写真も)せっかく来てくださったので、撮ってもらいました(中略)」とGⅠ・400勝以上を挙げている世界的な名伯楽の意欲的な姿勢に感服していた。>
https://tospo-keiba.jp/breaking_news/51954

 参戦したのは、オーギュストロダン。父はディープインパクトであり、血統的には日本への適性はバッチリ。ただ、逆に血統的には大丈夫そうな日本馬が、凱旋門賞では惨敗してますからね。いつも書いているように、それより調教などが適正に関わってくるのでしょう。案の定、4番人気の8着に敗れています。
 日本の競馬は特殊すぎるので、やっぱりジャパンカップは軽視ってことで良いんじゃないですかね…?

 ただ、この敗退のせいで、「外国調教馬として日本国内の競馬場で実施された史上初めての引退式」に加えて、「JRAのレースを一度も勝利していない馬の引退式の実施も、史上初めて」というおもしろ記録が生まれました。

オーギュストロダン (競走馬) - Wikipedia
<ジャパンカップでは道中中団で脚を溜めたが直線で伸びあぐねて8着に終わり、引退レースを勝利で飾ることはできなかった[30]。レース後、東京競馬場のウィナーズサークルにて『引退お披露目式』と称する事実上の引退式が行われた[31][32]。これは外国調教馬として日本国内の競馬場で実施された史上初めての引退式であり[33]、その実績と日本にゆかりが深いディープインパクト産駒であることから執り行われたものである[33]。JRAのレースを一度も勝利していない馬の引退式の実施も、史上初めてとなった[31]。 >