2024年4月10日水曜日

テンポイント死亡も…重い斤量と故障の関係はよくわかっていない?

■2023/01/29 斤量60キロで故障した馬が出て、虐待の声や斤量見直し論が出る…
■2020/09/25 66.5kgの重い斤量が災い?故障した名馬テンポイントの悲劇
■2020/09/25 テンポイント死亡も…重い斤量と故障の関係はよくわかっていない?
■2020/09/25 障害の難易度が高いのと斤量が重いの、日本と海外どちら?
■2020/09/25 斤量が効くかどうかは、コースや馬場によって全然違う?
■2021/01/25 軽量馬が64kg背負って圧勝!64kgの勝利は約20年ぶり
■2023/01/29 斤量60キロで故障した馬が出て、虐待の声や斤量見直し論が出る…

 2023年01月28日東京11R・白富士S(芝2000メートル)の3コーナーで競走中止となったサトノフラッグ(牡6=国枝)。故障と見られていました。その後、JRAが左前肢ハ行と発表しています。
 サトノフラッグの場合、「594日ぶりの実戦」という点も話題に。この594日ぶりなのに、陣営がわざわざ重い斤量のレースを復帰戦を選んだことについては、戦前から心配する声が出ていました。

・白富士Sで競走中止のサトノフラッグ、左前肢ハ行 JRAが発表(スポニチ    2023年01月28日(土) 17時04分)
<サトノフラッグは父ディープインパクト、母バラダセール(母の父ノットフォーセール)の血統。20年にはG2・弥生賞ディープインパクト記念を制し、この日は21年6月13日のG3・エプソムC以来、594日ぶりの実戦だった>
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=220794

 ここまではわかる話だったのですが、「マジで言っているの?」と思ったのが、60キロの斤量があること自体に批判が出ていたこと。後述するテンポイントのような斤量ならわかるのですが、60キロは全然極端な斤量ではありません。
 もちろん一部の人しか言っていないわけですが、ひとりじゃなくて複数いたのでどうもマジで言っている感じだったんですよ。ストレートに「60kgは虐待」と主張する人は明らかに60キロを問題視。「サトノフラッグの故障でまた斤量が議論になる」といったコメントもあり、これもまた60キロを問題視していることがわかります。

 わかりづらかったのが、「最近60kgで何頭走っていようが今日サトノフラッグが60kg背負って故障したのが現実」と書いていた人。ただ、これもたぶん「60キロは重すぎる」という主張なのでしょう。
 なんでわかりづらいと思ったのかというと、これは普通サトノフラッグの故障は斤量のせいとは考えづらい…と言うときの論理に微妙に近かったためでした。
 普通に科学的な考え方をすれば「今日サトノフラッグが60kg背負って故障したのは事実だが、60キロで走っているの多数の馬が故障していないため、斤量のせいとは考えづらい」といった感じになります。「何頭走ってようが故障した馬が1頭でもいれば斤量のせい」という主張は、非科学的思考すぎて想定外でした。

 この論理がまずいとわかるのは、斤量が軽くても同じ主張が可能であることでしょう。
 例えば、軽ハンデ49キロの馬が故障したときにも「最近49kgで何頭走っていようが今日49kg背負って故障したのが現実」と言えちゃうんですね。感情論のみで論理性ゼロでまずいですわ。
 こういう考え方だと詐欺にも簡単に引っかかっちゃうので、考え方を改めていってほしいです…。


■2020/09/25 66.5kgの重い斤量が災い?故障した名馬テンポイントの悲劇

  重い斤量といえば、テンポイントです。66.5kgの斤量で出走したテンポイントは、斤量を懸念していた鞍上の思いとは異なり、斤量を苦にしている様子はなく、むしろ「楽勝だ」と感じる走り。しかし、第4コーナーに差し掛かったところで左後肢を骨折し競走を中止しています。
  重症でしたが安楽死は行わず、手術し闘病を行いますが、結局、亡くなりました。テンポイントのいた吉田牧場の人と知人だった親族は、テンポイントの壮絶な闘病についてよく話を聞かされたといいます。

■2020/09/25 テンポイント死亡も…重い斤量と故障の関係はよくわかっていない?

 ただ、負担重量 - Wikipediaでは、テンポイントの事故以来、重い斤量が避けられているが、<科学的に斤量の差がどのくらい馬に負担をかけるのかは解明されていない>と書いていました。出典がなく、独自研究とされる部分なので、注意が必要ですけどね。これ以降の引用部も独自研究の疑いのあるところでした。

 
<日本では馬によっては59キログラムのハンデを苦にせずGI競走の前哨戦で背負いながらも勝つことも多く、実際のところは馬の能力によって左右される。ただし、日本では60キログラム以上の斤量で出走させることはまれである。とくに、ハンデキャップ競走で66.5キログラムの斤量を背負ってレース中に故障したテンポイントの事故以降、極端に重い斤量を嫌う傾向が顕著となっている。ただし、科学的に斤量の差がどのくらい馬に負担をかけるのかは解明されていない>

 これは、単に詳細不明というだけで、重い斤量だから故障しやすいわけではないという意味ではないと思うのですけど、実際、よくわかっていない可能性もあるかもしれません。

 例えば、イギリスのGIの障害戦チェルトナムゴールドカップでは6歳以上牡騸馬は74.5キログラムと定められているとのこと。こうした重い斤量のレースで、飛越によらない競走中止が多いかどうか見ていくなど、分析する必要がありそうですね。

 他に<アメリカのダート競走はハンデキャップ競走をのぞけば日本同様58キログラム以上の斤量を背負ってGI競走を走ることはまれであり、こちらは日本の競馬に近いといえる。一方で、ヨーロッパは全般的に60キログラム以上を背負うことも多い>という話もありました。後述するように、62kgの例も出ています。


■2020/09/25 障害の難易度が高いのと斤量が重いの、日本と海外どちら?

 ところで、先の障害戦のところでは、障害競走では道中あまりにスピードを出しすぎると飛越の際に危険を伴うので日本では60キログラム程度の斤量となることが多いが、日本以外では国により異なるがより重い斤量となっていることが多いという話でした。

 そもそも日本の障害は海外より楽な障害が多いと聞いたことがあったので、日本より難しい障害の海外が、加えて斤量も重いというのは意外でした。ただ、よく考えてみると、スピードを出しすぎると飛越の際に危険を伴うから重くしているという当初の目的からすると、障害が難しいからこそ、より斤量を重くしてスピードを落とすということなのでしょう。矛盾はありませんでしたわ。

■2020/09/25 斤量が効くかどうかは、コースや馬場によって全然違う?

 あと、この独自研究部分では、凱旋門賞に関する話がありました。単純に斤量だけでなく、コース形態によって斤量が効くかどうか変わってくるという話。日本でも同様だともされていました。

<フランスの凱旋門賞では4歳以上牡馬に59.5キログラムを背負わせて走らせることになっており、前哨戦で好成績をあげたのにもかかわらず、連覇に臨む馬が惨敗することが多い。ただし、イギリスの短距離GIであるナンソープステークスは4歳以上牡騸馬の斤量が62キログラムとなっているなど、凱旋門賞が特別な重量であるとはいえない。
斤量が与える影響に関しては、凱旋門賞が行われる高低差の激しいパリロンシャン競馬場とナンソープステークスが行われる平坦なヨーク競馬場の違いもあり、コース設計やレース距離が影響している可能性もある。実際、凱旋門賞はフランスで時期、距離区分によって決定された馬齢重量に従い、ほかのレースと同じく3歳と4歳以上は3.5キログラムの斤量差があるが、凱旋門賞だけは顕著に3歳が有利になっている。ロンシャン競馬場で凱旋門賞と同日に行われるアベイ・ド・ロンシャン賞は古馬、3歳ともに62キログラムである。
また、斤量差は日本のような走りやすい軽い芝よりも、ヨーロッパのように力のいる重い芝の方がより顕著に出るといわれていて、日本の競馬では重馬場のときに斤量の軽い方がより有利になるといわれている>


■2021/01/25 軽量馬が64kg背負って圧勝!64kgの勝利は約20年ぶり

 謎の多い斤量に関する話では、JRA「驚愕」斤量64kgが20年ぶり勝利! 馬体重448kgのノワールギャルソンが、まさかの7馬身差圧勝 - GJ()という記事も出ていました。

 2020年3月28日、中京競馬場で行われた障害オープンをに7馬身差をつける強い内容で勝利したノワールギャルソン。斤量は近年では珍しい64kgでした。障害オープンを2勝している実績馬にも関わらず、8番人気であったのは、こうした斤量の重さもあったのではないかとされています。64kg以上を背負った馬は、ここ20年間勝っていなかったためです。しかも、軽量馬に分類されて良い、馬体重448kgの小さい方の馬ですからね。競馬記者は、「障害レースに詳しいファンなら『64kg以上は文句なしの切り』」と言って驚いていたそうです。

 斤量64kgの勝利は2000年9月のロードアトラス以来、約20年ぶり。ただ、13連敗ということで、連敗はそれほど多くありません。そもそも64kgというのは最近珍しいですからね。もともと重い斤量が課される障害レースでさえ、出走は稀で、今回のノワールギャルソンが約3年ぶりの出走だったそうです。ちなみにJRAでの過去最高斤量の勝利は1932年の77kg(フラミンゴー)だとされていました。すごい斤量ですね。

 なお、この記事は、斤量の重さが故障と関係あるのでは?と匂わすことを書いていました。<ちなみに2000年のロードアトラス以降、斤量64kg以上を背負った馬は13回出走したが、勝利どころか2度の競争中止がある。これだけを見ても、如何に過酷な斤量であるのかが窺える>とのこと。ただ、前述の通りデータが少ないため、なんとも言えず。障害競走であれば平地とは競走中止の多さもかなり異なることも考えなくてはいけません。前回紹介したように、イメージとは裏腹に、斤量の重さが故障に与える影響は、まだよくわかっていないのではないかと思われます。