2024年4月7日日曜日

騎手などが馬を蹴る・殴るという競馬の虐待、処分軽すぎ?

■2022/03/09 騎手などが馬を蹴る・殴るという競馬の虐待、処分軽すぎ?
■2021/08/18 東京五輪の馬術で虐待…なぜか虐待した人よりルール叩きに
■2021/10/23 日本の五輪馬術で唯一の金メダル西竹一は持ち馬のウラヌスで優勝
■2023/02/07 競馬開催を中止しない理由が「動物愛護」 どういう理屈なのか?


■2022/03/09 騎手などが馬を蹴る・殴るという競馬の虐待、処分軽すぎ?

 もともと書いていた話では、オリンピックの馬術のコーチが馬を殴ったというものでした。残念なことに、こうした馬への暴力は競馬でもちょくちょく見られます。
 紹介するのが遅れていましたが、問題が起きた東京五輪開催の数ヶ月前の2021年04月21日にあった<【地方競馬】ばんえい競馬能力検査における出走馬への不適切な対応について>というニュースも虐待関係のニュースでした。

<北海道帯広市が主催するばんえい競馬で、18日に帯広競馬場にて実施された『令和3年度第1回能力検査』第18競走において、鈴木恵介騎手が出走馬(ドウナンヒメ)を蹴る事案が発生した。
 出走馬が第2障害を越えられず座り込んでしまい、起き上げようと手綱を引く等の対処をしていたが起こすことができず、馬の顔を蹴るという行為に至ったもの>
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=186830&rf=related_info

 ばんえい競馬では、「如何なる理由であれ、出走馬を蹴るということは認められず」として、鈴木恵介騎手を厳重注意のうえ、戒告処分に。ただ、騎乗停止すらなくかなり軽いですね。
 鈴木恵介騎手自身が『令和3年度ばんえい競馬第1回開催』(23日開幕)から当面の間の騎乗自粛を申し出たことで、やっと「騎乗停止相当」といった感じになっていました。netkeibaでも、やはり処分が甘いといった反応など、批判が多く出ています。

<ばんえい側の処分甘すぎでしょ!!>
<騎手をやめるべき>
<こんなに気分の悪くなる話も滅多にないよ>
<いろんな理由があるにしろ、蹴り飛ばすのわアカンな。俺らも馬券外れたら馬がやられた事同じ事してあげるよ鈴木よ>
<馬の顔めがけて蹴り上げてるもんな。普段からあんなことを日常的にしてるんだろな>
<この騎手 何年か前も暴力沙汰起こしてるし 人間性がそうさせるんだろ>

 コメントでは、<厩務員やら馬主やらが「砂に顔を埋める窒息を回避するための行為でやむを得ない」と擁護してますが、ならば何故処分されるんですかね>というものがありました。
 本当に馬を救うための行為であるのなら、むしろ馬を蹴るのを推奨すべきということになるのですから、処分というのは矛盾。前述の通り、ばんえい競馬は「如何なる理由であれ、出走馬を蹴るということは認められず」としているのですから、この擁護は妥当ではないと考えられたようです。
 別記事の転載もコメント欄では見られました。以下のような内容であり、やはり妥当な行為ではないと見られます。

<山を越えられずに馬が前脚をたたんでへたりこむと、そりから降りた騎手が手綱を引っ張った後、左足で馬の顔を蹴り上げた。いったん馬は立ち上がったが、再び座り込んで顔を地面につけ、騎手は右足で顔を蹴っている。
鈴木騎手の行為について、取材にこう答えた。
「現場にいませんでしたので詳細は分かりませんが、騎手に事実確認したところ、馬が言うことを聞かなくてイライラして蹴ったと聞いています」
鈴木騎手が馬の鼻に入り込んだ砂に対処した可能性が関係者から指摘されていることについては、「本人に聞いたところ、そういう状況ではなかったと話していました」と説明した>

 こうなってくると、やはり「なぜ軽い処分?」というところが気になります。
 他のコメントでは、<なんというか平然としていて、常態化されているようにしか見えません。これが氷山の一角とするのなら、まずはこの人から初め全てを変え切ってほしい。ばんえい界きっての名手といえど問答無用に永久追放をのぞみます>といったものがありました。
 その後、同じ年の11月に<鈴木恵介騎手 通算3,000勝を達成 | 【公式】ばんえい十勝>というニュースが出ていたように、史上最速で3,000勝を達成するほど、ばんえい競馬の中心騎手であった模様。有力騎手であるため、開催者側が忖度したのかもしれません。

<ばんえい十勝の鈴木恵介騎手は、2021年11月29日(月)の第7競走でジェイマーサ号に騎乗して優勝し、通算3,000勝を達成しました。3,000勝達成はばんえい競馬史上5人目、現役では3人目です。
また、デビューから23年10ヶ月での3,000勝の達成は、藤本匠騎手の27年2ヶ月の記録を更新し、ばんえい競馬史上最速での達成となります。>

生年月日/1976年10月7日(45歳)
出身地/北海道森町
本年度成績/548戦85勝
通算成績/18,072戦3,000勝(うち重賞84勝)
過去5年の重賞優勝(BG1)/
2017年 天馬賞       センゴクエース号
2017年 イレネー記念    ホクショウムゲン号
2017年 ばんえい記念    オレノココロ号
2018年 ばんえい記念    オレノココロ号
2018年 ばんえいグランプリ オレノココロ号
2018年 ばんえいオークス  ミスタカシマ号
2019年 帯広記念      オレノココロ号
2020年 ばんえい記念    オレノココロ号
2021年 帯広記念      オレノココロ号
https://banei-keiba.or.jp/tp_detail.php?id=6721


■2021/08/18 東京五輪の馬術で虐待…なぜか虐待した人よりルール叩きに

 東京五輪の近代五種女子の馬術で2021年8月6日、ドイツのアニカ・シュロイの騎乗した馬が障害の飛越を拒否した際にライスナーコーチが「馬を叩け」と指示し、コーチが自らの拳で一度、殴っている様子が映像によって記録されていました。騎乗したシュロイも殴りましたたが、戸惑い涙を流していました。
 国際近代五種連合(UIPM)は7日に映像で確認したところ「拳で馬を殴っているように見える」と判断され、ルール違反であるとして追放処分を下しています。

 シュロイは、「私は(殴ることを)試してみたが、馬が行きたがらなかった。それで泣いてしまった」とコメント。金メダル候補であったらしいのですが、動かない馬に動揺している様子が見て取れたとも伝えられています。
 一方、追放処分を受けたライスナーは「私は叩けと言いました。しかし、それは決して馬を傷つけるものではありません。鞭で叩くことは拷問とはみなされていない。馬の口が裂けてはいないし、鋭いもので刺したわけではない」と弁解していたそうです。
(東京五輪「馬への虐待行為」で海外SNSが大炎上…近代五種女子でドイツコーチが障害を跳ばない馬を殴って追放処分 8/8(日) 10:26配信 THE PAGEより)
https://news.yahoo.co.jp/articles/922760907074a018185f7374a536aa9a0c745039

 ただ、問題は競技ルールにも及んでいて、ヤフーニュースのコメント欄は虐待ではなく、ルールを責めるものが上位になっていました。
 記事のルール説明によると、選手は、抽選で選ばれた馬を与えられ、競技が始まる前に馬との絆を作るために与えられる時間はたった20分だけだとのこと。これは私も驚き。確か過去の大会では、自分の馬で飛んでいたはず。日本でも有名な馬がいました。これは今度追記したいですね。
 また、今回騎乗したセイントボーイという馬はシュロイの前にもロシア選手のジャンプを拒否しており、ドイツの近代五種連合によるとシュロイのラウンドの前から前の選手の影響でトラウマになっていたともされていました。

 SNSでは「選んだ馬との絆を深める時間はわずかしかなく、選手は馬を道具としか見なくなり、そして馬を酷使するようになる」などとコメント。ドイツオリンピックスポーツ連盟もルール変更の可能性についてコメントしています。
 ヤフーでは、「むしろ自分が調教した馬を使えないという競技ルールの方に問題があるのでは」といったものが人気していました。虐待よりルールが問題といった勢いです。

 しかし、問題点がずれてきてしまった感じはありますね。まず、ルールがどうであれ、馬への虐待は認められません。「虐待よりルールが問題」というのはあり得ず、あり得るのは「虐待は当然問題だけどルールも問題」といったものでしょう。
 また、「自分の馬を使えない」というのもルールとしてある意味公平性があり、考え方としてはアリだろうということ。例えば、競艇なんかではボートは抽選ですよね。良い馬を持っている人が勝ちやすい…というのは不公平だとも考えられるのです。
 さらに、馬は他の種目で使う「道具」とは異なり、たいへん高価。自前で用意するのはたいへんですし、輸送にも高額の費用が必要になります。金持ちだけが勝てる競技にしないようにするというのは、考え方としてはアリでしょう。
 輸送の関係があるので、今大会も日本の馬を中心に使ったんじゃないですかね。名前のセンス的に日本っぽかったセイントボーイを検索してみると、やはり水口乗馬クラブという日本の馬っぽいです。サラブレッドではなく、ウォームブラッドという品種でフランス生まれだそうです。

 ということで、現行ルールの思想も理解できます。とはいえ、良い馬の購入から普段の馬の調教まで含めて競う…という考え方ももちろんアリですよ。前述の通り、過去にはそういうルールでやっていたはずですし、競馬の世界なんかは今でもそういう考え方。大金持ちが圧倒的に強い世界です。
 とりあえず、馬を持ち込みにする、馬と触れ合う時間を増やす…などといったルール改正はアリだと思いますが、「虐待よりルールが問題」というのはあり得ないので、問題点を見間違えないようにしてほしいです。


■2021/10/23 日本の五輪馬術で唯一の金メダル西竹一は持ち馬のウラヌスで優勝

 最初のときに書いていた「確か過去の大会では、自分の馬で飛んでいたはず。日本でも有名な馬がいました」で想定していたのは、バロン西こと西竹一さんのウラヌスという馬です。
 Wikipediaによると、西 竹一さんは、日本の陸軍軍人。1932年ロサンゼルスオリンピック馬術障害飛越競技の金メダリストです。このときの相棒がウラヌスなのですが、ウラヌスはロサンゼルスオリンピック側で用意した馬ではなく、以前より西竹一さんが乗っていた馬でした。

<1930年(昭和5年)に、出場が決まったロサンゼルスオリンピックのために半年間の休養を取り、アメリカ合衆国とヨーロッパへ向かった。この際にヨーロッパへ向かう船内で当時の世界的スターのダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォード夫妻と親交を持った。
 3月に西はイタリアにて、後に終生の友とも言うべき存在となる愛馬ウラヌス(ウラヌス号)との運命的な出会いを果たす。西は6,500伊リラ(当時の換算レートで、6,500伊リラ=100英ポンド=1,000日本円)でウラヌスを自費購入した。西はウラヌスと共にヨーロッパ各地の馬術大会に参加し、数々の好成績を残す>

 1,000円と聞くと安く感じますが、1930年(昭和5年)ですからね。検索してみると、前年の昭和4年の銀行員の初任給が70円。現在はむしろ銀行員の初任給は抑えられているらしいのですが、198,000円が多いとのことです。これをベースにすると、当時の1円は2830円ということになります。そして、当時の1000円はこの1000倍ですから283万円。意外に安いですね。
 Wikipediaでは、この部分に<世界大会での使用に耐え得る一流の馬術競技馬は、少なくとも現代においては億円単位の値段が付けられるほどの高い価値を持つ存在である>という注釈がついています。私は最初「今で言う億単位」という意味だと思ったのですが、計算すると思いのほか安くなってしまったので、「考えられないほど安く買えた」という意味かもしれません。

 その後のウラヌスですが、前述の通り、1932年(昭和7年)のロサンゼルスオリンピックで活躍。西はあざやかな手綱さばきでウラヌスを駆って馬術大障害飛越競技にて優勝し、金メダリストに。これは、日本勢がオリンピック馬術競技でメダルを獲得した唯一の記録となっています。
 最後の障害でウラヌス自身が自ら後足を横に捻ってクリアしたこともあり、インタビューでは「We won.」(「我々(自分とウラヌス)は勝った」)と応じていたとのこと。ウラヌスはすごい馬だったみたいですね。

 一方、西は1936年(昭和11年)のベルリンオリンピックにも参加していますが、ウラヌスと臨んだ障害飛越競技では競技中落馬し棄権。オリンピック数ヵ月後の同年11月には日独防共協定が締結されていることから、この意外な落馬には主催国ドイツの選手に金メダルを譲るために西が計った便宜ではなかったかという憶測が当時から流れていたといいます。忖度が疑われているようです。
 なお、西は同大会では元競走馬のアスコットと共に総合馬術競技にも出場し、12位となっていったとのこと。別の相棒もいたんですね。また、ウラヌスについては、他に以下のような逸話がありました。

<馬事公苑で余生を過していたウラヌスに会いに行き、ウラヌスは西の足音を聞いて狂喜して、馬が最大の愛情を示す態度である、首を摺り寄せ、愛咬をしてきたという>
<生前の西は「自分を理解してくれる人は少なかったが、ウラヌスだけは自分を分かってくれた」と語っていた。なおウラヌスは体高(肩までの高さ)が181cmもある大きな馬体。性格はかなり激しかったらしく、西以外は誰も乗りこなせなかったという>

 この西竹一ですが、寿命が短い馬のウラヌスよりわずかに早く亡くなっています。太平洋戦争での戦死です。太平洋戦争開戦の経緯を考えると、本来なら死ななくて良かった方だったでしょう。


■2023/02/07 競馬開催を中止しない理由が「動物愛護」 どういう理屈なのか?

 2021年2月のラフィアン早期募集のお知らせでの、岡田紘和社長のあいさつが書かれた紙を保存していました。この冒頭では、前年の2020年に新型コロナウイルス問題により、世界各国で競馬開催が中止になった話をしています。
 その上で2021年現在は、新型コロナウイルス対策による都市封鎖が行われている中でも、競馬開催が行われている国が増えたことを指摘。その競馬開催施行の理由が「動物愛護の観点から競馬開催中止による悪影響が大きいとの判断」だとされており、「私はこの理由に違和感を覚えます」と書いていました。

 これは確かにわかりづらい理由ですね。岡田紘和社長はこれ以上の説明をしておらず、詳しい理由は不明。どういう理屈か?と言うと、ネットで検索してみたものの、当時はそもそも「動物愛護の観点で競馬開催」という話すら見つかりませんでした。
 なので、本当の理由は不明。とりあえず、私は以下のように想像しました。この流れを見てスッキリ…というものではなく、やはりちょっと違和感を覚える人は多いんじゃないかと思います。

(1)競馬開催を中止する。
(2)競馬開催がない一方で、馬を維持する費用などもろもろの費用はかかる続ける。
(3)競馬による収入がないのに馬の維持費などがかかるため、馬主など競馬関係者の経済的な負担が大きくなる。
(4)競馬関係者が経済的な負担を減らすために、競走馬などを殺処分することが多くなる。
(5)馬の殺処分を増やさないためには、競馬開催をした方が良い。したがって、競馬開催が動物愛護になる。