2023年2月28日火曜日

吉田直弘調教師が馬をさん付けで呼ぶのはなぜ?

■2021/10/14 吉田直弘調教師が馬をさん付けで呼ぶのはなぜ?
■2023/02/28 レース前と言ってること違いすぎない?和田雄二調教師ツッコまれる


■2021/10/14 吉田直弘調教師が馬をさん付けで呼ぶのはなぜ?

 Our Pleasure2019年10月号に載っていた吉田直弘調教師の話がおもしろかったです。「グリットさん(マイネルグリット)」「プリサイスさん」などと馬名に敬称をつけるんだそうな。その理由を尋ねたところ「馬が走ってくれるので僕らの仕事が成り立ちます。馬に敬意を表さないと」と笑っていたそうです。
 吉田直弘調教師の通算100 勝達成時のコメントも変わっています。「すべての方に感謝の気持ちでいっぱいです」は普通ですが、その後に続く言葉が変わっています。「感謝の気持ちを忘れず競馬を通して社会に貢献していきます」というもの。「社会に貢献」というフレーズはこうしたインタビューでは珍しいと指摘されていました。競馬以外でもあまり聞かないですね。
 ただ、私は仕事というのはどんな仕事でも社会貢献だと考えているし、むしろビジネスで社会貢献すべきだと考えているので共感するところ。ボランティアみたいなわかりやすい仕事などを念頭に「社会する仕事が貢献したい」なんて言う人が多いですが、「考えが足りない」と就活採用者も指摘していました。
 このように「社会に貢献」という変わったフレーズが飛び出してきたのは、以下のようなユニークな経歴と関係するとされていました。

「大学時代、吉田青年が明け暮れたもの、それが「人形劇」だという。(中略)「自分が1年生だったとき、1年生だけで話を考えて児童の前で上演したんですね。全然ウケなくて。一方、4 年生の先輩たちの劇はすごく盛り上がって歓声があがる。その違いがわからなかったときに、先輩から言われたんです。『子どもの目線に立って物語を作らないと』って。それからは児童やお年寄りの方に喜んでもらえるよう、相手の立場に立って考えました」

 その後は、海外青年協力隊に興味を持って、「将来、発展途上国の人々の力になりたい」と考えるように。海外青年協力隊が悪いと断定するわけではありませんが、これは前述のわかりやすい社会貢献パターンで、あれ?と思いました。しかし、ここで挫折しているのです。
 相手のためにやろうとしたことがかえって逆の結果をもたらしてしまうケースもあり悩んだんだとのこと。海外青年協力隊の場合はちょっと違うでしょうが、私がパッと思い浮かべるのは、寄付などによって現地の人の職の奪うなどのパターン。なので、私はビジネスで社会貢献すべきという考え方なのです。

 ということで、ここで挫折して、周囲から他の進路も考えてみては、と勧められ「自分にできること」を考えた結果、選択したのが協力隊の活動で培ってきた「農業」だったとのこと。ところが、大学の就職課で紹介されたのが、競走馬の生産牧場という全く畑違いのところでした。
 以前、吉田直弘調教師は吉田姓なので、社台グループや吉田牧場などの吉田一族と関係あるのかな?と調べたものの、それらしい話がなかった…ということがあったんですよね。全く関係なかったんですね。「競馬をまともに見たのは、牧場に勤めてから」だといいます。難関の試験に合格し、厩務員としてトレセン入り…ということになっています。

 なお、調教師になってからは「火曜日追い」という他の厩舎にない工夫もしていました。
「単純な話、なぜ土曜日出走する馬も日曜日に使う馬も、一律水曜に追うのか、という疑問があったのです」
「水曜追いで土曜競馬ですと追い切りからレースまで中2日。日曜なら中3日。その中1日の差は考えなくていいのか、と思ったのです。そこで一度、火曜日に追ってみたのですよ。結果、競馬へ向かう調整の良い選択肢が増えた、そう思えたのです」

 …といった感じで好感を持てるインタビューでした。このまま終わるときれいで、オチなんかつけない方が良いんですが、好感を持てて共感できる一方で、肝心の成績は評判悪いんですよ。あのモーリスを走らせられなかった調教師(堀宣行厩舎に転厩後大活躍)として有名で、ネットでは評判が悪い調教師なんです。私は応援したいと思いましたけどね…。


■2023/02/28 レース前と言ってること違いすぎない?和田雄二調教師ツッコまれる

 最近応援している馬の1頭であるウインレイアー。現時点ではまだ勝てていないのですが、仕上がっていないながらも新馬戦で好走して、壊滅的な同世代のウインレーシングクラブでは珍しく勝ち上がりが期待できそうな1頭となっています。
 このウインレイアーの調教師は和田雄二さん。特にイメージが悪い調教師さんではなかったのですが、このウインレイアーに関するコメントに関してはツッコまざるをえないことになっていました。

 ツッコまざるをえないコメントをしていたのは、2戦目の2023年1月29日(日)の未勝利戦。レース後、和田雄二調教師は以下のようにおっしゃっており、このコメントだけ見るとなんてことありません。極めて普通です。

和田雄二調教師 2023年1月29日(日)
「今日はメンバーもかなり揃っていましたし、そこでの掲示板ですから、いい内容だったと思います。この後は問題なければ中山で続戦の予定です」
https://www.win-rc.co.jp/site/belonging/list/belong_list_detail.php?hcd=20200013

 強力メンバーが相手で掲示板なら「十分よくやった!」といった評価。ただ、3日前の2023年1月26日(木)には、「ここで勝ちたい」という勝ち負けレベルの期待だったんですよね。

和田雄二調教師 2023年1月26日(木)
「前走が1本追い切りが足りない状況でも見せ場十分でしたし、今度は上積みもありますから楽しみは大きいです。ここで勝ち上がりたいですね」

 勝てるかどうかというラインだったのが、いつの間にか「掲示板なら上々」というところまで合格ラインが大きく下がっていました。これはツッコまざるをえませんわ!
 このため、netkeibaの掲示板でも言及されていました。

 [115] りんさん
戦前はここで勝ち上がりたいと言ってて、終わった後はこのメンバーで5着と頑張ってくれましたって言ってる
この調教師マジでよく分からん

 [116] ミスターミスターさん
>>115
その気持ちは理解できる。
一戦一戦を、大事に使ってほしい。
ただ、この厩舎は、ウインにしては、いい騎手選択をしてくれている(引用者注:ちなみにデビュー戦は津村明秀騎手、この日は坂井瑠星騎手でした)。
そちらを評価したい。

 [113] Kuro96さん
悪くないレースだった。前回がフロックでは無いのが良く分かった。
ただ、相手関係を確認せずこのレースを選択した陣営のミスでは?
メンバー次第ではチャンスは近いと思います。


2023年2月27日月曜日

定年引退間近の調教師の厩舎の馬が出走ラッシュ、問題な理由は?

■2018/07/29 定年引退間近の調教師の厩舎の馬が出走ラッシュ、問題な理由は?


■2018/07/29 定年引退間近の調教師の厩舎の馬が出走ラッシュ、問題な理由は?

 定年などで引退がする調教師の厩舎の馬が出走ラッシュになるというのは、冬(春?)の風物詩みたいな感じで、特に何とも感じていませんでした。ただ、言われてみれば確かに!と思ったのが、ラフィアンの岡田紘和代表の指摘でした。

 とりあえず、岡田紘和代表は、定年間近の厩舎は総じて出走回数(または頻度)を増やす傾向にある、といった言い方。特にもともと出走に慎重な厩舎ほどその傾向は顕著で、「今までのポリシーは何だったのか」と思うくらいだとしていました。
 「通算勝利数○○○勝まであと○勝などであればその気持ちは分かる」とも言っています。<風物詩みたいな感じで、特に何とも感じていませんでした>と書いたように、問題視していなかったくらいですから、もちろん私にも気持ちがわかるものでした。
  ただし、確かに問題だと思ったのが、「厩舎が解散しても、競走馬自身は問題がない限り転厩して現役を続行するのですから、急に間隔を詰めてレースに使うことに合理性はありません」ということ。もっともな指摘、正論です。
(Our Pleasure 2018年4月号巻頭のごあいさつより)

 情が支配する世界ですので、馬主さんもこうした調教師の行動に理解がある人が多いのではないかと思いますけど、冷静に考えてみれば、本来、馬主からしてみると堪ったものではありません。数千万円かかる動物を、そんないい加減な管理されたら参りますよね。
 引退調教師のこの件ではあまり批判する人がなかったものの、これは、オグリキャップの件と似たものでしょう。オグリキャップが連闘など過酷すぎるローテーションを組まれた際には、「オグリ獲得のために動いた高額なトレードマネーを回収するためには、とにかくレースで稼いでもらう」よりほかはなく「馬を酷使してでも賞金を稼がせようとしているのでは」と推測されたことがありました。こちらは批判だらけだったものです。
 よく考えてみると、「定年引退間近の調教師の厩舎の馬が出走ラッシュ」もこれに近いもの。これを問題視してこなかったというのは、私も感覚が麻痺していた気がします。



2023年2月26日日曜日

コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯

■2017/11/06 日本馬のレベルは高く、世界に通用して当然!
■2017/11/06 コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯
■2018/07/23 ヨーロッパで1位と2位になったポップロックとコスモバルク
■2018/07/23 コスモバルクは種牡馬入りすれば成功した?その血統は?


■2017/11/06 日本馬のレベルは高く、世界に通用して当然!

 児玉 敬さんは、塚尾牧場(静内)、鍋掛牧場(栃木)と国内での経験を積んだ後、アメリカのサンタアニタ競馬場(カリフォルニア)に行っています。
 その後、今度はアイルランドに行って、この国にはまりました。ラッド、トラベリングヘッドラット、アシスタントトレーナーを経験しアイルランド調教師免許を取得します。
 ところが、3シーズンの調教師活動で資金が尽きて、一旦免許を返納。アイルランドではよくあることで、儲からないどころか、お金が減りまくるのです。
   Enjoy Ruffian 2010年2月号のシャムロックの草原から〈19〉は、それから5年、アイルランドセリ会社Goffs日本代理人だった頃の話であり、なおかつ調教師に再挑戦する経緯について書かれたものでした。そして、これにコスモバルクが大きく関係していたのです。

 ただ、その前に、日本の馬は海外で通用するという話。この話は、ビッグレッドグループの会報ではよく出てきます。
  児玉さんもそういう思いがあったようで、ある日、JRAワールドスーパージョッキーシリーズに参戦したアイルランドのミック・キネーン騎手の世話係として帰国した際に、騎手らとそういう話をしました。
 話を聞いたのは、 キネーン騎手始めライアン・ムーア騎手(英国)、ダグラス・ホワイト騎手(香港)、クレッグ・ウィリアムス騎手(豪州)など。彼らの見解は概ね以下のようなものだったそうです。

「日本産馬のレベルが欧州産馬のレベルと遜色がないこと、これはもう疑いようがない。勿論欧州には世界トップレベルにある超一流ホースが何頭もいる。そのレベルの馬達に欧州の地で日本馬が勝つというのは多分至難の技だろう。でもな、そんな欧州のスーパーホース達が日本のトップホース達を敵にしてジャパンカップで勝つことだって同じように至難の技だろう。(中略)
競馬の流れ、馬場、欧州と日本では大きく競馬が違うということは確かだ、でも欧州産でありながら欧州競馬より日本競馬に適しているタイプの馬がいると思えるように、日本にだって日本の競馬より欧州でより力を発揮するタイプの馬が存在するはずだ。そんなタイプの日本産馬達が欧州の競馬を舞台に日常的な活躍をする事が驚くべき事とは思わないし、世界中で競走馬の流通が日常的になっている現代競馬で、これほど高いレベルにある日本産馬が適性を生かせる場所を求めて世界に散らばっていかないほうが不思議なくらいだ」


■2017/11/06 コスモバルクのアイルランド移籍と児玉敬氏の調教師復帰の経緯

 さて、コスモバルクが登場するのはこの後です。
 児玉さんは年末、岡田繁幸前社長とご飯を食べたそうです。児玉さんは熱く語るタイプっぽく、いろいろと話があったのか、話し足らずにその後スナックに場所を移して話していました。
 そこで、岡田さんが 「今週末の有馬記念で8着までに来なかったらバルクは引退させることにしている。まだまだ元気だし、本当はもっともっと頑張らせてやりたいんだけど…」と言ったんだそうです。

 これを聞いた児玉さんは、 「バルクならまだまだ欧州でやれると思います。シンガポールで国際G1まで取ったバルクが欧州の環境でもう一度元気に世界に挑戦するのを見てみたいです。アイルランドには8歳9歳で競馬を盛り上げているトップクラスの馬は沢山います」と熱弁。
 さらに、以下のようにバルクのアイルランド移籍を進言してしまいました。

「それに年齢を重ねたアイルランドの馬達に、苦痛の中で過酷な競走生活を強いられているという悲壮感を僕は決して感じません。
賞金的魅力はないかもしれません、でも、バルクに日本馬の本当の強さを欧州の人々の心に広く伝える開拓者として、もし海を渡ってもらえる事が出来たら、どんなに嬉しいかわかりません」

 はっきりと書いていないのですが、どうもこの流れで児玉さんが再び調教師をやって、コスモバルクを見るということになったみたいです。


■2018/07/23 ヨーロッパで1位と2位になったポップロックとコスモバルク

  Enjoy Ruffian 2010年4月号 シャムロックの草原からによると、この時点で児玉敬さんの調教師再開に予想されていたメンバーは、コスモバルク、ポップロック、セイウンヒーローそしてピサノティファニーの4頭。
 アイルランドの競馬主催者HorseRacingIrelandにバルクとポップの登録について話をした際、この4頭について、以下のようにからかわれたそうです。

「タカシ、当たり前のことだけどな、この2頭、登録と同時に間違いなく現在の欧州現役馬賞金ランキング1位2位になるぞ! お前も派手に舞い戻ってきたなぁ」
 
 そうか、そうなのか!これは全く考えたことがありませんでした。ポップロックは5億1,118万円 、コスモバルクは4億8,216万円を稼いだ馬です。日本は賞金体系が高額というだけでなく、ヨーロッパでは早く引退する馬も多いでしょう。そう考えると、世界の現役賞金ランキングでは、日本馬が常に上位なのかもしれませんね。


■2018/07/23 コスモバルクは種牡馬入りすれば成功した?その血統は?

 なお、ピサノティファニーは地方1勝、セイウンヒーローは中央1勝と、競走成績はふるいませんしたが、この2頭は「超良血」です。こちらも、からかわれたそうです。

「お前、このピサノティファニーっていう牝馬はアメリカのトップスタリオン、タピットの妹じゃないか? しかもこのセイウンヒーローってヘクタープロテクター、ボスラシャム、シャンハイの弟か?」

 ピサノティファニーはこの2010年シーズンを児玉敬厩舎で走り、2011年には昨年の欧州年度代表馬シーザスターズとの交配を予定。これまたすごい馬ですね。
 またセイウンヒーローは同じく2010年シーズンをアイルランドで走ったのち、南米はチリで種牡馬入りの予定でした。
 この他、同じくチリで種牡馬入りが決まっている重賞勝ち馬のステキシンスケクンも現役最後の数レースを僕の厩舎で迎える予定だったとのこと。ステキシンスケクンは逃げ先行が多かった馬で、結構応援していました。だいぶ後になって、馬名の由来がヤクザ問題の島田紳助と知って嫌になったんですけど…。

 児玉敬さんは調教師再開の動機として、"「日本馬は強い」。世界を相手にそれを証明してみたい。日本に存在する、忘れられてしまうかもしれない世界的良血馬にもっと色々な可能性を持ってもらいたい"などといったことを挙げていました。
 ポップロックは後にチェコで種牡馬入りしましたけど、この馬の場合は 確か現地で走ったおかげで決まったんじゃなかったかなぁ。どうでしたっけ?その話も裏取れたら追加します。

 コスモバルクの方はアイルランドに行ったものの、結局、怪我で出走できず、種牡馬としてお呼ばれもしませんでした。
 「種牡馬になれば成功したのにビッグレッドファームは馬鹿」という人も多いのですけど、先祖に中央競馬の重賞勝ち馬がいない血統ですからね。セイウンヒーローとは逆に、かなり珍しいレベルで血統の悪い馬ですので、客観的に見て成功確率が高いと思われません。これは繁殖牝馬が集まらない理由にもなります。妥当な判断だったでしょう。
 ちなみにコスモバルクの父の ザグレブもそれまで日本では目立った産駒を出せなかったために、生まれ故郷のアイルランドに再輸出されたという馬でした。
 でも、逆に言えば、こんな血統から活躍する馬を見つけてきて育て上げたのですから、すごいですね。

 


2023年2月25日土曜日

斑点のあるブチコの毛色、白毛とされているが本当は斑毛(ぶちげ)

■2014/10/26 斑点のあるブチコの毛色、白毛とされているが本当は斑毛(ぶちげ)


■2014/10/26 斑点のあるブチコの毛色、白毛とされているが本当は斑毛(ぶちげ)

 新馬戦で「ブチコ」という名前の馬を発見。最初てっきり「プチコ(Puchiko)」だと思ったんですが、よく見ると「ぶちこ(Buchiko)」。
 ふーん、ぶちがあるのかな?と思って、実際に新馬戦を見ると本当見事なぶちがあります。というか、ベースは真っ白です。
 調べてみると、白毛で有名なシラユキヒメの子でした。こんなんになるんだ。ちょっとかわいいです。

 検索すると、いくつか記載がありました。登録上は白毛ですが、斑毛(ぶちげ)と呼ぶみたいですね。
 知りませんでしたが、お姉さんのマーブルケーキも色違いの斑毛。マーブルケーキというよりは、チョコチップバニラな気がしますが…。
マーブルケーキ

チョコチップバニラ

 本当は斑毛というのは、シラユキヒメ - Wikipediaで知りました。2011年に生まれたマーブルケーキは、登録上は白毛だが、栗毛の斑点を有するブチ模様だとのこと。
  同じく2012年に生まれたブチコも、登録上は白毛だが、鹿毛の斑点を有するブチ模様。

 かわいいなぁ。ちょっと応援したいです。



2023年2月21日火曜日

競走馬は「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」と言う調教師の思惑

■2016/1/8 競馬評論家が言う「馬は幼いころから特徴が変わらない」は本当なのか?
■2016/1/8 競走馬は「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」と言う調教師の思惑
■2016/1/8 これも商売…牧場の人が「馬は見ても判らない」と言うにも思惑がある


■2016/1/8 競馬評論家が言う「馬は幼いころから特徴が変わらない」は本当なのか?

 Enjoy Ruffian2009年9月号 Bell The Horseで、ラフィアンの岡田紘和代表は、「馬は幼いころから特徴が変わらない」と言う競馬評論家がいるという話をしていました。また、「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」と言う調教師がいるそうです。
 私も「競走馬は一度馬体が完成する」と聞いたことがあります。これが生まれてすぐのことだったかもしれません。

  ところが、「馬は見ても判らない」と言う生産者もいます。
 これでわかるように、"これらには多かれ少なかれ、それぞれの見栄や思惑があります"と、岡田紘和代表が指摘していました。ポジショントーク的なところがあるんですね。

 明らかに嘘くさいのは、一部の競馬評論家の言う「馬は幼いころから特徴が変わらない」というもの。
 当然ながら、変わる特徴もあれば、そうでない特徴もあります。また、生育環境が悪ければ、これまた当然ながら立派には育ちません。普通の話です。


■2016/1/8 競走馬は「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」と言う調教師の思惑

 おもしろいのは、残りの二つについての指摘。はっきりと発言者の「思惑」が見られるものです。
 まず、"「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」と言う調教師"の話。

-----引用 ここから-----
「生まれてすぐの馬体を見る方が判りやすい」という可能性は完全に否定はすることはできませんが、成馬に近づく程判断がし易いのは明白です。調教師には早いうちに良血馬を確保したいとの思惑もあるので、馬主に勧めるには上手い言い方です。
-----引用 ここまで-----

 調教師さんが馬主さんに良さげな馬を早く買ってほしいがための、セールストーク的なもののようです。実際、調教師さんが勧めた馬が百発百中で走るかというとそうではありませんから、真実ではないと考えていないでしょう。


■2016/1/8 これも商売…牧場の人が「馬は見ても判らない」と言うにも思惑がある

 成長した方が見やすいのでしたら、生産者は活躍する馬がわかっていそうなものです。しかし、その生産者も「馬は見ても判らない」と言います。
 これはわかりやすいですね。走らない馬がわかっては、売れなくなりますもの…。生産者側にも誇張が入っているのです。

-----引用 ここから-----
 それは生産馬を売却して成り立っている牧場主は、「馬は判らない」ほうが都合が良いからです。JRAで新馬・未勝利戦を突破できるのは年間約1400頭。日本での年間生産頭数は7000頭から8000頭ですから、生まれた馬の5~6頭に1頭しか勝てないということです。つまり走らない馬の方が多いので、仮に売り手が「馬を見れば能力が判る」としたら、ほとんどの場合走らないと知っていて売ったということになります。でも、生産者ははっきり判らずとも、同じ世代の生産馬や兄姉と比べてどうかぐらいは感じているはずです。
-----引用 ここまで-----

 ただし、"馬体観察で能力を判断することは可能ですが、非常に難しい"ということで、簡単ではないことは確かです。「馬は見ても判らない」は大げさではあるものの、実際、かなりわからないのは本当でしょう。
 1歳馬セールのようなかなり成長した後のトレードの高額馬でも走らない、デビュー直前コメントが外れる、ということもよくあります。

 この話をしていた岡田紘和さんのラフィアンは、勝ち上がり率が上記のものよりは明らかに高く、かなりよく見極めている方。特にここは安い馬が主体ですから立派です。
 とはいえ、勝ち上がらない馬が多いのも事実。こんな風に馬体の見極めは非常に難しいわけですが、難しいからこそ他と差をつけることができます。チャンスがあると考えられるかもしれません。