2023年3月20日月曜日

「常識にかかってきた」「常識にかかる」という謎の競馬用語

■2019/11/03 「常識にかかってきた」「常識にかかる」という謎の競馬用語
■2023/03/09 普通に走るだけで勝てる実力…「常識にかかってきた」の使用例


■2019/11/03 「常識にかかってきた」「常識にかかる」という謎の競馬用語

 応援している馬の1頭ウインインペリアルは、どの騎手が乗っても「能力はあるのに」と言ってくれます。ただ、「能力はあるのに」でわかるように、能力を発揮できていません。とにかく真面目に走ってくれず、ひどいときには鞍上を振り落として走るのをやめてしまう気の悪さです。
  このウインインペリアルが2019年10月6日の1勝クラス で、13番人気という低評価だったにも関わらず、5着になりました。不利がありながらの5着であり、やはり能力はあるのだと再確認できるレースでした。
  そのレース後の10月10日のウインレーシングクラブでの近況報告では、鮫島調教師が「馬の集中力を考えると2000mが限界かもしれませんが、ようやく常識にかかってきた感じがします」とおっしゃっていました。で、「常識にかかってきた」ってなんじゃ?と思ったのです。

 検索してみると、やはり普通は使われない言葉みたいですね。検索で上位に辞書の説明がなかっただけでなく、 「競馬関係の人しか使わない言い回しのような気がする」と書いている方がいました。この方の場合は以下のように捉えているそうです。

<明確な定義は分かりませんが、「馬が競馬を覚えて、ちゃんとレースになる」といった意味合いでよく使われます>
(常識にかかってきた: ノーマネーの一口馬主日記リターンズより)

 競馬以外ではそもそも使われないようですが、「常識にかかる」は一般的に言うと「常識的な行動をする」ということで、競走馬にとっての「常識的な行動」というのは「きちんとレースをすること」…といった感じなんでしょうね、たぶん。
 「あのサッカー選手は最近常識的なプレーをするようになった」みたいに、そもそもスポーツにおいて「常識的な行動」うんぬんを言われること自体があまりないので、かなり不思議な表現だと感じました。おもしろいですね。


■2023/03/09 普通に走るだけで勝てる実力…「常識にかかってきた」の使用例

 「常識にかかってきた」「常識にかかる」が実際に使われているもう少し収集してみることに…。
 今回見つけたのは、<【パラダイスS】リフレイムが〝普通〟の競馬でリステッド初勝利 黒岩調教師「ここにきて常識にかかってきた」>(競馬ニュース・特集なら東スポ競馬 2022/06/26)という記事です。
 「ちゃんとレースがでてきていなかったが、本来なら力があるので実力を出して結果を出せるようになった」という話で、やはり「常識にかかってきた」は「馬がまともに走って力を出せるようになってきた」といった意味で使われています。コミュニケーションが難しく、全く人の思い通りにならない競馬ならではの業界用語(?)ですね。

<東京11RパラダイスS(3歳上リステッド、芝1400メートル)は2番人気のリフレイム(牝4・黒岩)が早め先頭から押し切ってリステッド初勝利を飾った。勝ち時計1分20秒2(良)。(中略)
 鞍上の野中は「ゲートはソロっと出して、この馬のペースで運んだ。馬場状態が合っていたし、軽ハンデ(53キロ)も良かった」と勝因を語れば、黒岩調教師も「いい脚を長く使える長所が生かせましたね。ここにきて常識にかかってきたし、目標としていた賞金加算に成功。このあとは一旦放牧へ。次走はゆっくり考えていきます」と安どの息をついた>
https://tospo-keiba.jp/breaking_news/16158

 ちなみにリフレイムはこの3戦後にもオープンのコールドムーンSを勝利。ただ、身体面での異常を発症したことにより引退。牝馬で繁殖という道があるということもあって、無理させなかったのでしょう。