2024年6月12日水曜日

ラムタラが失敗したのは、母父サンデーサイレンスが少ないせいって本当?

■2014/7/8 ラムタラが失敗したのは、母父サンデーサイレンスが少ないせいって本当?
■2014/7/8 社台グループの馬はラムタラを拒否していたのか?データを見ていくと…
■2023/03/09 ニジンスキー系好き調教師すらもラムタラを評価してなかった事実


■2014/7/8 ラムタラが失敗したのは、母父サンデーサイレンスが少ないせいって本当?

 現役時代は非常に印象的でドラマチックな話の多かったラムタラが亡くったそうです。
 で、ラムタラの掲示板を見ていて気になったコメントがありました。

-----引用 ここから-----
かなり今更なことだけど。
ラムタラ自信の能力と種牡馬としての成績があまりに違うのが気になって、産駒の活躍馬の血統を見てたら、母父サンデーサイレンスが1頭もいなかった。

サンデーサイレンスの牝馬を付けてれば大抵何かしら成功するのが近年の種牡馬だと思ってたから、ラムタラとサンデーって相性悪かったのかって思って検索してみた。
父ラムタラ母父サンデーサイレンスの産駒を検索すると、ここのデータベース上たったの9頭。
ラムタラだって導入当初から数年間かなりの種付けをしたはずなのに。
結局、生産者同士の対立が成功を阻んだのかなと思いました。

まぁ、産駒を残せない名馬だっているんだから産駒を残せただけ良かったのかも。
ラムタラの競走馬としての魅力は色褪せないし。
でも、ちょこっとだけ母父ラムタラに期待したいです。

2013/2/8 17:26
http://db.netkeiba.com/?pid=horse_board&id=000a0001d4
-----引用 ここまで-----

 単純に当初は母父サンデーサイレンスが珍しく、一般化してからはラムタラの種牡馬成績が芳しくなかったってだけじゃないですかね?
 母父サンデーサイレンス以外でも"日高の生産者を中心に、数々の実績馬・良血馬を含む112頭を初年度の交配相手に揃え"ていました。(繰り返すように当時は母父サンデーサイレンスが少なく、まだ母父実績も確定していません)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%BF%E3%83%A9


■2014/7/8 社台グループの馬はラムタラを拒否していたのか?データを見ていくと…

 ラムタラの母父サンデーサイレンスは少ないというのは確かです。9頭だけですからね。
 ラムタラと比較できそうな日高の馬としてはブライアンズタイムかな?(当時は新冠の早田牧場。2002年の破綻後にラムタラと同じアロースタッド)と思って、ブライアンズタイムを見てみました。こちらは61頭いました。
 ブライアンズタイムの母父サンデーサイレンスに対して、ラムタラの母父サンデーサイレンスは少なすぎじゃん!と思うかもしれません。ところが、1990年代に限れば、ラムタラ1頭、ブライアンズタイム2頭でそれほど変わりありませんでした。
 しかも、ラムタラの日本の初年度産駒は1998年産ですから、1998年と1999年に限れば1対1で引き分けです。

1997年 ラムタラ0頭 ブライアンズタイム1頭
1998年 ラムタラ1頭 ブライアンズタイム0頭
1999年 ラムタラ0頭 ブライアンズタイム1頭

 母父サンデーサイレンスが増えるころになってからは、さっき言った通りラムタラへの期待値が下がってしまっていたのでどうしようもなかったと思われます。
 あっ、でも、結果が出るまではもう少しかかるかな? 日本での初年度産駒のデビューは2000年ですからね。ネット競馬で見える産駒の数見ると激減するのは2003年生まれからです。

1998    87
1999    72
2000    68
2001    73
2002    79
2003    42

 2002年までラムタラが7頭、ブライアンズタイムが14頭。半分ですね。全体の産駒は以下のようにそこまで差はありませんので、ラムタラ少なすぎと言えそうなデータが出てきました。

生年 ラムタラ ブライアンズタイム
1998    87    86
1999    72    97
2000    68    104
2001    73    93
2002    79    114
2003    42    111

 ただし、社台グループのラムタラいじめが怪しいと言える情報がまだあります。2002年までにラムタラにつけた社台グループの母父サンデーサイレンスの馬は1頭なのに対して、ブライアンズタイムは0頭だったのです。
 「生産者同士の対立」を言うなら、ブライアンズタイムの方が当てはまる感じ。ただ、これを言うのなら母父サンデーサイレンス以外の繁殖牝馬も数えないといけませんかね。
 で、数えてみると、1998~2002年の社台グループはラムタラが17頭、ブライアンズタイムが36頭でした。やはりブライアンズタイムが多くなりましたが、社台グループで17頭もつけているのですからあまり対立はなさそうな感じ。

 Wikipediaによると、ラムタラを導入したジェイエスは社台グループへの対抗心アリアリだったのでは?と疑われたようではあります。

-----引用 ここから-----
俗にあった「サンデーサイレンス・社台に対抗するためではないか」との見方について、矢野(購入したジェイエス代表の矢野秀春)は「サンデーは、お金を出せば誰でも付けられますし、事実、静内の生産者の多くがお世話になっています。サンデー憎しという気持ちはありません」と、これを否定した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%BF%E3%83%A9
-----引用 ここまで-----

 前述のように社台グループへの種付けも許されているんだし、矢野秀春代表が言うように、実際、あんまり関係なかったんじゃないかと思います。


■2023/03/09 ニジンスキー系好き調教師すらもラムタラを評価してなかった事実

 ラムタラ失敗は社台の陰謀説に絡んで検索してみると、ラムタラ産駒がいた時代に現役の調教師であり、ニジンスキー系をこよなく愛したという白井寿昭・元JRA調教師による、<白井元調教師と学ぶ血統学【20】「種牡馬ラムタラ」に足りなかったもの>(競馬ニュース・特集なら東スポ競馬 2022/02/17)という記事を見つけました。

白井寿昭氏(元JRA調教師=以下、白井)奇跡の馬。神の馬。そんな呼ばれ方をしたくらいの派手なキャリアやったけどな。種牡馬としては残念な成績やった。
松浪 その現役時代の走りを実際に見て、種牡馬としての成績を先生は予見していた、とのことでしたが。
白井 そうやね。予見していたとまでは言わんけど、投資に見合う馬とは思ってなかったね。
https://tospo-keiba.jp/onkochishin/8406

 実は白井寿昭調教師、1戦1勝のキャリア、長い休み明けで勝利するという常識はずれでラムタラが勝利したエプソムダービーを間近で見ていたそうな。パドックを見てもすごい感じはなく、血統は良いと思ったものの、ピンと来なかったといいます。

白井 常識を覆す勝利であったことは否定しない。それでも、僕にはピンとこなかった(苦笑)。
白井 この栗毛の馬はどんな成績なんやろ? そう思って成績表を見たら、キャリアが1戦しかなくてさ。「え、こんなんでもダービーに出れんの? ずいぶんと楽な世界やなあ」と。そのように思ったから、ラムタラのことを覚えているんや(苦笑)。
白井 それだけ。申し訳ないが、インパクトはゼロに近かった。
白井 (引用者注:勝ったのには、)驚いた。本当に驚いたな。こんな馬でもダービーを勝てるんか…。そう思ったくらい。その後の活躍を考えたら、ちょっと失礼やったかもしれんけど(苦笑)。
白井 血統表を見て、ニジンスキーの直子なんや。母はブラッシンググルーム産駒のスノーブライド。あ、ノーザンダンサーのインブリードもある。素晴らしい血統の馬なんやなあ、と。そんな感じやったかな。

 白井寿昭調教師は「我の強さ」を重視。この点で言うと、ラムタラには我の強さが足りなかったといいます。

白井 種牡馬になって、日本に来たときにも感じたことやけど、ラムタラはおとなしいんだな。競走馬としては扱いやすいかもしれんけど、これでは特徴を産駒に伝えられんやろうな、と感じたな。
白井 競走馬としての性格と、種牡馬としての遺伝力は違う。優れた能力を持っていても、それを産駒に継承できなければ、何の意味もないんやな。これがあっさりと感じた一番の理由だったかもしれないね。

 「我の強さ」については、ちょうどサンデーサイレンスとも比較されていました。サンデーサイレンスにあって、ラムタラになかったのが、この「我の強さ」であるようです。
 この「我の強さ」は正直科学的根拠がなさそうに見えます。ただ、能力を出し切った好成績の馬よりも、能力を出し切っていなくても好成績だった馬の方が潜在能力が高く、種牡馬としての成功可能性も高い…といった感じに理由づけできるかもしれません。

白井 種牡馬として成功する馬のほとんどは、自己主張が強いタイプやからね。ラムタラはそれを満たした馬ではなかった。感染症を患ったため、キャリアを積めなかったことは後で知ったし、それが種牡馬になって影響した可能性はあるかもしれん。けど、そのような先入観を持たない状態で、僕はラムタラの返し馬を見た。そのときの印象が良くないんだから、どうしようもないよな(苦笑)。
松浪 サンデーサイレンスのような、強い自己主張をしないラムタラに、先生のアンテナが反応しなかった。
松浪 スピード不足に瞬発力不足。様々な要因があったでしょうが、一番は能力を伝えきれなかった遺伝力に原因があったのではないか──。なかなか面白い結論となりましたね。
白井 配合をいくら考えたところで、どうにもならん問題やからね。だからこそ、僕は血統表だけでなく、実際に馬を見ることの大切さを説いている。サンデーサイレンスとラムタラ。この2頭は、それを如実に表していると思うよ。

 あと、ニジンスキー系好きの白井寿昭調教師的には、ラムタラはニジンスキーの直子でも「父のニジンスキーと違う栗毛の馬」だったことで「ニジンスキーの血を求めた僕からすれば、それもラムタラを敬遠する材料になったかもしれん」としていました。
 なお、ここでも社台対抗説が出ていましたが、白井寿昭調教師はやはり否定的。バブル時代の日本に多かった金額がすごいだけで中身が伴わない「爆買い」の一例かもしれません。本当、日本人は買い物が下手くそですね…。

松浪 結果的に失敗となってしまったラムタラの導入。44億円という金額を含め、先生はどのように考えていますか?
白井 手の届かないはずの名馬に手が届いた。バブル経済の影響は大きかったと思うね。サンデーサイレンスに対抗するための導入…なんて声もあったけど、その意見に僕は否定的で、かつてのテスコボーイが与えてくれたような夢を、日高の生産者は見ていたんじゃないかな。もっとも、このような熱意は血統の更新に必要なもので、結果は伴わなかったとしても、それは日本の競馬発展につながっていくと思う。