2024年4月16日火曜日

濃い多重インブリード(クロス)の馬は走る?ファントムシーフに注目

■2022/06/18 濃い多重インブリード(クロス)の馬は走る?ファントムシーフに注目
■2023/02/13 ファントムシーフ、G1で人気になるほど期待される馬になる!
■2022/11/11 ダイナカール・キングマンボ・ノーザンテースト…濃いめのインブリードが3本!
■2022/07/12 多重インブリードのロゴマジック、配合は吉と出るか凶と出るか?
■2022/08/20 サンデーサイレンスなど…奇跡の血量2本を含む4本のクロスの馬


■2022/06/18 濃い多重インブリード(クロス)の馬は走る?ファントムシーフに注目

 今年のPOG馬はことごとくハズレ続きな感じのスタートで、1番人気に答えて新馬勝ちしたハービンジャー産駒ファントムシーフも指名はしていません。ただ、注目はしていました。インブリードが特徴的だったためです。
 単純に濃いインブリードの馬というのはときどきいるものの、ファントムシーフの場合は濃いものが複数入っていてなおかつ人気馬だったので、どうなるだろう?と興味深く見ていました。

 濃いクロスのひとつはデインヒル。ハービンジャーの父父と母母父に入って3 x 3、25%です。
 ファントムシーフがすごいのはこの3 x 3、25%がもう一つ入ること。これはHasili、Arriveでの3 x 3という珍しいもの。姉のHasiliと妹のArriveという同血姉妹でのクロスですね。牡牝(兄妹や姉弟)の組み合わせでも珍しいのに、姉妹でのクロスというのは、本当に珍しいです。

 ただ、この2つの3 x 3が同じところに入るので、実質2 x 2と見られる可能性も。どういうことか?と言うと、父父Dansiliと母母Promising Leadは、父デインヒルが同じで、母が同じ父Kahyasi母Keraliの配合である全姉妹の姉のHasiliと妹のArriveなんですね。なので、3 x 3が2本のイメージよりもさらに濃い配合です。2 x 2に近いです。
 この他に、Northern Dancerの5 x 5 x 5 x 5(12.50%)が入ります。こちらは濃くありませんが、前述のふたつとの合せ技でさらなるインパクトに。かなり冒険的なおもしろい配合だと思います。

 掲示板で血統に関する話がないかとちょっと見てみました。やはりいくつかありましたので、紹介しておきます。

 [5] ツーサバンナさん
この馬の血統は、恐ろしいくらい近い同族のクロスですね。
吉と出るか? 凶と出るか?
興味津々です。
谷川牧場で考えられたクロスであれば 吉と出るように思います。
早く、馬を見てみたいです。
種牡馬に成って貰いたい馬です。

 [7] YAAHさん
インタビューで3×3の強いクロスって言ってるけど、
極論したらDansili, Promising Leadの2×2ですよね(^^;)
気性に問題ないならポチっと賭けてみたいです

 [16] 式舞さん
当選して本当に嬉しく思います。
欧州競馬で見る様な大胆な配合が本馬にはされてますが、健康体に育っている時点で谷川牧場さんの狙いは成功したと思っています。

 [351] アゴ太郎さん
Hasili=Arriveの全姉妹クロスの成立は欧州の血統ファンが見たかった配合かもしれないですね。
HasiliはG1馬5頭を産んだ超名牝でハービンジャーの配合上のポイントになってますし、Arriveは産駒のPromising Leadが愛プリティポリーS勝ちの牝馬で本馬の母母。Promising Leadからは目立った馬はいないようなので、最良のラインでこのクロスを成立させてると考えています。
また、全姉妹や全兄弟クロスは字面よりもインブリードの弊害が出にくくなる印象なので、個人的には2×2というより3×3が2つあると考えています(あんまり変わらないか?)。
https://db.netkeiba.com/?pid=horse_board&id=2020106582


■2023/02/13 ファントムシーフ、G1で人気になるほど期待される馬になる!

2022/11/11:その後、ファントムシーフは2022/09/24に野路菊S(OP)を2番人気で勝利。負けなしの2戦2勝ですので、今のところは大成功!といった感じです。

2023/01/14:前年末の話ですが、ファントムシーフがG1ホープフルステークスで2番人気でしたので、期待して見ていました。ただ、結果は4着までです。

 坂口正大元調教師は「4着ファントムシーフは4角から直線で少しごちゃつきました。流れが遅くなり馬群がばらけないと、最内枠があだになることもあります。やはり2歳戦は難しいですね」というコメントでした。
(【坂口正大元調教師のG1解説】お見事ムルザバエフ騎手 ドイツで名をあげた理由わかる好騎乗 22/12/28(水) 17:49配信 日刊スポーツより)
https://news.yahoo.co.jp/articles/dfddfa3fdc7815e8648e35b8e12c3d57b09073d4

 ファントムシーフ鞍上は若い頃好きだった福永祐一騎手。私は最初の時点で、積極的ではなくてどうかと思いました。ただ、結果的には、まずまずの位置になったので、積極的ではなかったことは問題なかったのでは?と思い直します。
 ところが、この後、さらに判断を転換。坂口正大元調教師の記事が「お見事ムルザバエフ騎手」であったように、積極的に前に行った騎手がうまく乗る、スロウでの前残り展開に。結果論ですので、私もこの展開は全然読めなかったのですが、結果的にはやはり最初の積極性が足りなかった感じがありますね。

2023/02/13:共同通信杯、ファントムシーフの鞍上が福永祐一騎手ではなくてびっくり。また、私が見た時点では4番人気だったかな?人気がないのもびっくりして購入しました。何しろG1ホープフルSは2番人気だった馬で、結果も4着と悪くありませんでした。1度負けただけであまりにも人気を落としすぎでおいしいと思いました。
 とはいえ、鞍上がルメール騎手なのは気になるところ。前回書いたようにファントムシーフは、積極的に前に行った方が良さそうな馬。後ろからが多いルメール騎手が前で乗ってくれるかは不安がありました。

 また、福永祐一騎手が乗っていないことも気になります。よく見ると、福永祐一騎手はもっと人気の馬に乗っていました。ファントムシーフは最終的に4.1倍の3番人気、福永祐一騎手のタスティエーラは1番人気と0.1倍差の3.7倍で2番人気でした。福永祐一騎手が引退予定のためクラシックを見据えた鞍上変更という可能性も考えましたが、今回乗る馬の方がもっと人気ですし、新馬戦を勝ったばかりの期待馬に乗り換えたような感じです。

・【共同通信杯】タスティエーラ「無敗でクラシックへ進める器」と現場の評価もかなり高い! 2/11(土) 6:30配信
優馬
<日曜の東京で行われる共同通信杯。その中からまずはタスティエーラ(美浦:堀厩舎)。古馬の胸を借り、3頭併せの真ん中から抜群のキレ味で先着。時計的にも前走以上でしたし、間隔をあけて更なる成長を感じさせる内容だったと思います。ここを勝ってクラシックに名乗りを挙げられるか要注目です>
https://news.yahoo.co.jp/articles/f4e906523d7c05cd7fc5195bf5f84c79330ae6b3

 ただ、私の心配は杞憂に。ルメール騎手は最初から前でした。それどころかスピードにノリすぎて、途中から逃げてしまいそうな感じになり、逆に心配に。しかし、この心配もまた杞憂に。出遅れたところから抑えきれない感じで上がってきた9.2倍5番人気のタッチウッドが逃げてくれたので、うまい具合に2番手となりました。
 とはいえ、2番手でも前すぎて、3番手以降にマークされて差されそうなパターン。どうするか?と思いましたが、差してきた川田騎手の1番人気ダノンザタイガーのコースを塞ぎつつ、なんとかしのぎ切りました。ルメール騎手がうまかったですね。逆に言うと、騎手のおかげで勝てたレースかもしれません。
 出遅れて2着のタッチウッドや進路がうまくとれなかったダノンザタイガーという負けた馬に見どころがあり、ファントムシーフの力は抜けていないと感じさせるレースとなりました。

・アンカツさん「最高の立ち回り」共同通信杯勝利のファントムシーフ称賛「今年ならクラシックで用事ある」 2/12(日) 17:07配信 中日スポーツ
<道中2番手につけ、ゴール前でかわし重賞初勝利を飾った3番人気ファントムシーフについて「出遅れたタッチウッド、進路が塞がったダノンザタイガーをよそに最高の立ち回り。インパクトは敗戦組やったけど、これで理想のローテが組めるから。今年の相手ならクラシックで用事ある」と評価。
 さらに「間に合えばタッチは皐月賞、ダノンはダービー向き。(2番人気4着)タスティエーラはひとつ落ちる印象やった」とそれぞれ分析した>
https://news.yahoo.co.jp/articles/c48788d1346db15f81f24b0714b1dab0352d540d

ヤフーコメント
<2着馬は強烈に強い可能性が高い。
あんな出遅れして、更に行き足もつかず、ミドルペースのレースを外、外を追走してハナにたった時点で脚が上がって下がってくのが普通>



■2022/11/11 ダイナカール・キングマンボ・ノーザンテースト…濃いめのインブリードが3本!

 キリがないインブリードネタですが、濃いめのインブリードが3本あって、そのインブリードの馬が全部印象の強い馬だったので紹介したくなりました。この濃いめのインブリード3本の馬は、キングマンボ・ダイナカール・ノーザンテーストという顔ぶれです。特に名牝で名繁殖牝馬であったダイナカールのクロスってのが、堪らないですね!

ダイナカール - Wikipedia
<ダイナカール(欧字名:Dyna Carle、1980年5月10日 - 1999年4月15日)は[4]、日本の競走馬、繁殖牝馬。
1982年の最優秀3歳牝馬、1983年の最優秀4歳牝馬[5]。第44回優駿牝馬(オークス)の優勝馬である>
<4番仔のエアグルーヴが母子2代となる優駿牝馬を制し、更には天皇賞(秋)も制してトウメイ以来の牝馬による年度代表馬を受賞した>
<9頭の産駒のうち牝馬7頭は全て繁殖入りしている。その娘たちが産んだ孫世代からは、祖母・母共に勝てなかったエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴや[13]、高松宮記念を制したオレハマッテルゼ[14]、香港のクイーンエリザベス2世カップに優勝したルーラーシップ[15]などの活躍馬が次々と現れている。さらに曾孫世代からも、アドマイヤグルーヴ産駒で2012年の皐月賞・東京優駿(日本ダービー)のクラシック二冠を制したドゥラメンテなど、重賞競走優勝馬が輩出されている>

 ダイナカールがこのように名繁殖牝馬であったために、種牡馬側にも血が入ることで、裾の広がった牝系との配合が成立したんですね。そういう意味ではすでに何頭かいそうですし、これからも続々と誕生するかもしれません。
 で、肝心の3本クロスの馬ですが、ケイエイトという馬。正直言って注目馬ではなく、新馬戦は11番人気でした。

父ルーラーシップ     父父キングカメハメハ 父母エアグルーヴ
母ラベンダーカラー     母父サクラバクシンオー 母母セシルブルース
Kingmambo     18.75%     3 x 4
ダイナカール     18.75%     3 x 4
ノーザンテースト     15.63%     4 x 4 x 5

 前述の通り、新馬戦は11番人気と全然期待されていなかったのですが、4着と大健闘。インブリードが良い方に出たのかも…という結果でした。
 ただ、実を言うと、1つ上の姉のノーブルラベンダーが全く同じ配合であるため、すでにある程度結果はわかっています。そして、この姉は中央で4戦して8着が最高というボロクソな結果でした。
 中央ではさっぱり通用しなかったので地方に移籍し、名古屋では5勝を挙げていますが、正直、全然すごい!って感じはないですね。「濃いめのインブリードが3本あって名馬が誕生」というわかりやすいことにはならなかったようでした。


■2022/07/12 多重インブリードのロゴマジック、配合は吉と出るか凶と出るか?

 2022年7月10日福島芝1200の新馬戦。注目馬!って感じの馬ではないどころか、9頭立てで9番人気だったのですが、新馬戦の登録馬を見ていて多重インブリードが気になったのがロゴマジックという馬です。
 この多重インブリードがどう出るか?と気になって見ていたら、77.9倍という人気薄にも関わらず、5着と大健闘しました。

 ロゴマジックという名前でわかるように父はロゴタイプ。母エボニーアイボリーで母父はファルブラヴ、母母父ネオユニヴァースです。また、この馬の場合、母母母父もたいへん重要でNureyev(ヌレイエフ)となっています。
 これにより、以下のような多重インブリードに! 私は母と父をまたがないインブリードは重視しないため、そこだけカッコ付けで紹介しますが、以下のように、その2本を入れた場合6本、2本を抜いた場合でも4本という多重インブリードとなっています。

サンデーサイレンス     18.75%     3 x 4
Sadler's Wells、Fairy King     15.63%     5 x 3
Halo     12.50%     5 x 4 x 5
( Northern Dancer     9.38%     4 x 5 )
Nureyev     9.38%     5 x 4
( Special     6.25%     5 x 5 )

 実はこれ、私は1本勘違いして数えていて、母と父をまたがないインブリードが最初5本だと思っていたんですよね。ただ、今回紹介するにあたって数え直して、4本だと気づきました。これだとそれほど珍しくなかったものの、とりあえず、配合がうまく当たった模様。また、私の数え方でない6本はやはり多いと言えます。

 なお、ネット競馬の掲示板では、以下のように書かれており、前述したヌレイエフの母スペシャル(Special)がポイントとなる配合でした。この点においても、非常におもしろい配合。単なる多重インブリード以上のおもしろさがある馬です。

[1] ゆにさん JBQGMTM
Sadler’s Wells=Fairy King≒Nureyev5×3・4
サンデーサイレンス3×4
Special牝系の異なる有力種牡馬のニアリークロス「3」本はすごい

 Special(スペシャル)は名繁殖牝馬。ウィキペディアでは以下のような説明で、未勝利ながら繁殖牝馬としては大成功。子に種牡馬ヌレイエフがいて、孫にサドラーズウェルズ、フェアリーキング、ジェイドロバリーという種牡馬がいるため、他の繁殖牝馬ではほとんどないインブリードが比較的発生しやすくなっています。ただ、今回のロゴマジックはそれにしてもすごいですね。

<血統背景は、アルゼンチンの名馬でアメリカに輸入されたフォルリを父に持ち、アメリカで5勝したソングを母に持つ。全弟に1973年のサセックスステークス勝馬サッチ。近親には活躍馬が多数いる名血である。現役時代に特筆すべきものはなく、1戦して0勝に終わった。だが、繁殖牝馬となってからは、大種牡馬ヌレイエフ、繁殖牝馬フェアリーブリッジ(サドラーズウェルズ、フェアリーキングの母)、ナンバー(ジェイドロバリーの母)、キラヴィアらを輩出し名牝系を築いた>

 ウィキペディアでは、<近親エルコンドルパサーは、このスペシャルとその全妹リサデルのめずらしい全姉妹インブリードを持っている>とも指摘。スペシャルの入る血統はおもしろいかもしれませんね。


■2022/08/20 サンデーサイレンスなど…奇跡の血量2本を含む4本のクロスの馬

 インブリードネタを書き始めると、次から次と書きたい話が出てきてキリがないように…。なるべく珍しいのだけ…と思うのですが、ついつい書きたくなってしまいますね。
 本日の紹介馬ランフリーバンクスはクロスが4本。これくらいなら全然どうってことないのですが、いわゆる奇跡の血量である「4×3のインブリード」(18.75%)が2本ある配合だったんですよ。

ランフリーバンクス
父エピファネイア 母ワイルドラズベリー 母父ファルブラヴ 母母父サンデーサイレンス
サンデーサイレンス     18.75%     4 x 3
Sadler's Wells、Fairy King     18.75%     4 x 3
Seattle Slew     6.25%     5 x 5
Hail to Reason     6.25%     5 x 5

 正直言って、私はこの「奇跡の血量で良い馬が生まれる」という考え方は科学的根拠のない迷信だと思っているのですが、とりあえず、「奇跡の血量」はウィキペディアでもわざわざ単独の項目があるという重要な概念。ウィキペディアでは以下のような説明です。

<奇跡の血量(きせきのけつりょう)とは競走馬の交配を行う場合の血統理論のひとつである。理論名としては発表者であるM・S・フィッツパトリックとL・A・ラックブーの名前からフィッツラック繁殖説またはフィッツラックの18.75%理論と呼ばれる。
 インブリードで、4代前祖先(6.25%の血量)と3代前祖先(12.5%の血量)が共通の馬となる場合「4×3のインブリード」という。そのときの血量は6.25%+12.5%=18.75%となり、これをとくに奇跡の血量と呼ぶ>
<近親交配は、その共通する祖先の能力を大きく引き出せるといわれる反面、濃すぎる血量は虚弱体質や気性難など弊害もあるといわれている。そのギリギリのバランスがこの奇跡の血量18.75%と考えられている。
 これはイギリスの競馬関係者で古くからあった考え方であり、実践者として第17代ダービー卿が知られている>

 奇跡の血量を持つ活躍馬は多数いて、ウィキペディアでは長々と活躍馬の例を挙げています。では、なぜ私がこの概念が眉唾だと考えているのか?と言うと、奇跡の血量を持つ馬はそもそも珍しくないため。奇跡の血量を持っていても活躍しない馬が大量にいるんですよね。この効果を証明するのはかなり難しいと思われます。
 あと、最近、インブリードを気にして見ていて気づいたのが、そもそもアウトブリードの馬がほとんどいないということ。大抵の馬がクロスを持っています。このため、インブリードの評価もかなり難しいと思われます。
 もっともっとデータを集めたいところですが、インブリードを見ていると好みのインブリード、良さそうに見えるインブリードというのも出てきました。なので、「インブリードに全く意味はない」とも思わないのですが、とりあえず、劇的な効果はなさそうな感じです。

 インブリード全般の話ばかりになってしまいました。今回の主役、ランフリーバンクスの話に戻ります。「奇跡の血量を持つ馬はそもそも珍しくない」と書いたものの、彼女のように奇跡の血量を2本持つ馬はやはり珍しいと思いますね。なので、気になりました。きれいな配合だと思います。
 このインブリードがどう出るか?ですが、とりあえず、新馬戦は終了。2022年8月20日の札幌1500mでは、4番人気で2着。勝った馬とは3馬身差がつきましたが、他の馬たちとはある程度力量差を感じる強い感じの2着です。成功した配合かもしれません。
 ちなみに同じレースに2頭、私が指名したPOG馬が出ていたのですが、いずれも期待外れな負け方でした。ランフリーバンクスを指名しておいた方が良かったですね…。