2024年6月1日土曜日

活躍しても種牡馬は失敗?ディープスカイ、イブンベイ、パントレセレブルなど

■2019/09/22 活躍しても種牡馬は失敗?豪華メンツに圧勝のパントレセレブル
■2022/04/25 リーディング最有力ディープスカイが失敗 ダート向きも予想外
■2013/3/17 世界各国で活躍して日本に来たイブンベイだが種牡馬としては…
■2014/10/17 同父ディープスカイが失敗 G1未勝利でも超良血アドマイヤオーラに期待


■2019/09/22 活躍しても種牡馬は失敗?豪華メンツに圧勝のパントレセレブル

 未活躍で種牡馬としては成功する馬がいるというのは、競馬のおもしろさのひとつでそういった馬を集めた投稿をうちでは書いています。ただ、逆に現役時代は強かったのに、種牡馬としてはイマイチという馬もたくさんいますよね。
 今回はそういった馬のつもりで パントレセレブルを持ってきたのですけど、よく見るとG1馬を何頭も輩出しており、微妙なところ。一方で、父系が続いているか?というとそうではない感じ。大成功とは言えないといったところみたいですね。
 血統が悪かったわけではなく、Our Pleasure2018年11月号ザ・ブラッド 血統表を紐解く!(T.I.S)によると、英オークスと仏オークスを連勝したのち3歳牝馬で“キングジョージ”を制したポウニーズの他、ムーティエやモンタヴァルが近親にいました。母も米国でG2ロングアイランドHに優勝した馬。大成功しておかしくない血統でした。

  種牡馬としてはともかく競走馬としては、1990年代の欧州最強馬候補というほどめちゃくちゃ強かったパントレセレブル。 1997年の凱旋門賞で破った相手を見ると、そのすごさがわかります。
 その年のジャパンCでエアグルーヴ以下をおさえて優勝するピルサドスキー、ドイツの年度代表馬に輝いた名牝ボルジア、同厩舎で前年の凱旋門賞馬エリシオ、好メンバーが揃った同年の“キングジョージ”を勝ち上がったスウェインなどが相手でした。
 しかも、ただ勝っただけでなく圧勝。ピルサドスキーに5馬身差をつけて勝っています。当時のコースレコードを1秒7も短縮する2分24 秒6の好タイムで、規格外に強い勝ち方だったようです。これだけの馬の血統が続かなかった…というのは残念ですね。

■2022/04/25 リーディング最有力ディープスカイが失敗 ダート向きも予想外

 サンケイスポーツが種牡馬デビュー前に、コンデュイットと並んでリーディング有力などと書いていたディープスカイですが、見事に大ゴケ。有力牝馬を集めて盛大に撃沈してしまいます。ちなみにコンデュイットもコケており、サンケイスポーツの予想はあてにならない感じですね…。

 とはいえ、正直、私もディープスカイの大失敗は予想外でした。ディープスカイは戦績が良かったですからね。G1を1勝したが他はイマイチ…という馬ではなく、G1を2勝し、その後のG1で何度も善戦した馬。能力が高かったのは間違いありません。それだけにこれだけ走らないとは思いませんでした。

<成績は17戦5勝2着7回3着3回。初勝利はデビュー6戦目と時間がかかったが、9戦目となった2008年の毎日杯(Jpn3)で重賞初制覇を飾ると、続くNHKマイルC(Jpn1)でG1初制覇。さらに日本ダービー(G1)にも勝ち、破竹の3連勝で(中略)変則2冠を達成した。
 3歳秋は神戸新聞杯(Jpn2)で始動すると、天皇賞(秋)(G1)ではウオッカ、ダイワスカーレットと同タイムの3着に健闘。続くジャパンC(G1)は2着、古馬になり2009年の安田記念(G1)で2着、宝塚記念(G1)で3着と、G1戦線で安定した成績を残した>
(ディープスカイが種牡馬引退 | 馬産地ニュース | 競走馬のふるさと案内所 2021年10月11日より)
https://uma-furusato.com/news/entry-58778.html

 ディープスカイはさっぱり走らなかったものの、途中からダート向きとわかり、戦績が向上する馬が続出。ダート向きというのも想像できず、予想外でしたね。
 この関係で「ディープスカイはダート向きだとわかなかっただけで、種牡馬としては良い」といった主張も一時見られたものの、実はダート種牡馬とわかって以降の成績を含めても普通に悪いんですよね。繁殖牝馬が良いのに、AEIは0.83で、普通に壊滅的です。
 また、種付け頭数の推移を見ても、評価が回復しきらなかったことはわかるでしょう。そもそも活躍しているにしては、種牡馬の引退が早すぎ。普通に見限られました。

種付年度    種付頭数
2010    116
2011    115
2012    188
2013    127
2014    32
2015    8
2016    28
2017    36
2018    32
2019    20
2020    10
2021    5

 また、前述の記事にあった代表産駒を見てもレベルが高くないことがわかります。地方G1の他、重賞馬は出しており、悪いというほどではありませんが、現役時代の競走成績からすると見劣り。前述の通り、繁殖牝馬の質から見ても物足りないです。

<主な産駒は2015年の全日本2歳優駿(Jpn1)、兵庫ジュニアGP(Jpn2)などを制覇したサウンドスカイ、2016年のジャパンDダービー(Jpn1)などを制覇したキョウエイギア、2018年の京都記念(G2)、2020年のみやこS(G3)、2021年の名古屋大賞典(Jpn3)、佐賀記念(Jpn3)などを制覇したクリンチャー、2016年のLプレリュード(Jpn2)などを制覇したタマノブリュネット、2017年のアンタレスS(G3)などを制覇したモルトベーネら多数>

 数少ないアグネスタキオンの産駒で活躍してほしかったものの、ものの見事にコケました。これだけ華麗にコケるのも珍しいというほどのインパクトです。
 最初に書いたように、サンケイスポーツはリーディング有力と書いていたので、当時の記事も紹介しておきましょう。当時の期待の高さをうかがい知ることができます。

<大種牡馬サンデーサイレンスの後継種牡馬として確固たる地位を築いたアグネスタキオンが父。母アビは名繁殖牝馬Miss Carmieの3×4というインブリードを持つ。母方の配合種牡馬は底力に満ちており、軽快さが特徴であるSS系の父と絶妙なバランスを感じさせる。両親ともに活躍馬の多い母系の出身だけに、種牡馬として成功する要素は非常に多い>
(2013.4.16 11:59 【新種牡馬連載(4)】ディープスカイより)
http://race.sanspo.com/keiba/news/20130416/pog13041612040005-n1.html

 「両親ともに活躍馬の多い母系の出身」については当時<海外ではおそらく実績あるのでしょうが、近親で日本活躍馬がいないってせいもありますかね?弟、妹も走っていません>と、私はツッコんでいました。私は近親が日本で走るタイプが好みなんですよね。
 サンケイスポーツは、距離適正についても「むしろダートはダメ」と書いており、完全に外していました。

<自身がそうであったように、1600~2400メートルまでオールマイティーにこなせる。これは血統にも裏付けられており、SS系の中でも万能性という点では特に秀でている存在だ。反面、ダートでどれだけ通用するかは未知数。母の父がChief’s Crownだけに配合次第では砂適性のある馬も出てきそうだが、本質的には芝でこその種牡馬だ>

 初年度産駒については、<さすがに期待は大きく、116頭の繁殖牝馬が集まった。SS系の牝馬とは配合しにくい(とはいえ3代目なので可能性はある)ことを思えば、馬産地の期待度がうかがえよう>と書いていました。
 ただ、当時私は「競走成績からするとちょっと少ないかな?と思いました」という感想だったんですよ。マツリダゴッホの方が128頭と多かったのが意外だったんですよね。このマツリダゴッホの方がクセがありそうな種牡馬なのに成功したかな?と思ったものの、今見てみるとそうでもないですね。ディープスカイよりは良いです。ただ、大して良くはないですね。
 当時、マツリダゴッホの方が種付け頭数が多かった理由はふたつ考えていました。単純に種付け料の問題。もう一つは、名種牡馬サンデーサイレンスの直仔であるマツリダゴッホの方が、孫であるディープスカイより好まれた…という可能性。繁殖牝馬の質はマツリダゴッホの方が低かったので、今考えると種付け料が違ったのかもしれません。

 この繁殖牝馬レベルの違いの質の関係で、サンケイスポーツはディープスカイを「ファーストシーズンサイアーのリーディング最有力候補」としていました。これだけ良くて走らなかった…というのは、逆に清々しいほどです。

<繁殖牝馬の質も上々で、タニノシスター(ウオッカの母)、ディアウィンク(ナカヤマフェスタの母)、ファーザ(フリオーソの母)や、テイエムオーシャン(桜花賞などGI3勝)、シンコウラブリイ(マイルチャンピオンシップ)、スイープトウショウ(エリザベス女王杯)など豪華なラインアップ。ファーストシーズンサイアーのリーディング最有力候補と言えるだろう>

■2013/3/17 世界各国で活躍して日本に来たイブンベイだが種牡馬としては…

 イブンベイイ (Ibn Bey) は古い馬という印象しかなかったんですけど、ビッグレッドファームが初めて海外から導入した種牡馬なんだそうです。
 Wikipediaでは、まず以下のような説明でした。

<イブンベイ (Ibn Bey) とは、イギリス生産の競走馬、種牡馬である。1987年度イタリア最優秀3歳牡馬、1989年・1990年度ドイツ最優秀古牡馬。サウジアラビアの王族ファハド・ビン=サルマーンの所有馬で、馬名はアラビア語で「高貴な者の息子」の意。>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%A4

 この時点でいろんな国の名前が出ていて忙しいですけど、世界各地で活躍した馬でした。

<競走馬時代は7か国で走りG1競走を4勝。優勝した重賞競走はいずれも距離2400メートル以上の競走で、典型的な長距離馬だった。しかし3歳時に優勝したイタリア大賞はレコードタイムで優勝、1990年にアメリカに遠征して出走した距離10ハロン(約2000メートル)のブリーダーズカップ・クラシックでは12番人気ながらアンブライドルドの2着に入るなど、優れたスピードも有していた>

    2歳-2戦1勝
    3歳-7戦1勝(イタリア大賞・伊G1)
    4歳-5戦1勝(ドーヴィル大賞典・仏G2)
    5歳-7戦4勝(オイロパ賞・独G1、モーリスドニュイユ賞・仏G2、ジェフリーフリアステークス・英G2)
    6歳-8戦2勝(ベルリン銀行大賞・独G1、アイリッシュセントレジャー・愛G1)


 <日本のジャパンカップにも1989年、1990年と出走し、とくに1989年の第9回ジャパンカップではレース途中の1800メートルおよび2200メートルの通過地点で当時の日本レコードを上回る走破タイムを記録している>とWikipediaにはあります。
 ジャパンカップではこのようにハイペースを作ったため、ホーリックスの世界レコード樹立に一役買ったようです。JSEという競馬サイトでは、以下のような熱いコメントが寄せられていました。

-----引用 ここから-----
 「‘89JC6着」、だけでは片付けられない。今でも語り継がれる「伝説のJC」の影の立役者である。このレースには、過去のJCの中で史上最高(だと思っている)のメンバーが揃った。
昨年の覇者、ペイザバトラーを筆頭に、JCの1ヶ月半前に12ハロンの世界レコードを叩き出したホークスター、凱旋門賞を勝ったキャロルハウス・アサティスの両頭、NZの最強牝馬ホーリックス、さらにトップサンライズとこのイブンベイを加えた外国馬7頭。これを迎え撃ったのが、スーパークリーク・オグリキャップ・イナリワンの「平成の3強」。この3頭に加え、前週のマイルCSでオグリと死闘を演じたバンブーメモリー、宝塚2着のフレッシュボイス、さらにキリパワーとランニングフリーも出走。さらにさらに、「女傑」ロジータも出走するという、素晴らしいメンバー。

  このメンバーの中で、イブンベイは逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。これまで日本の競馬界、いや世界の競馬界が絶句するペースで。

  1000m通過が58秒5(2400mのペースじゃないだろ)、マイル通過が1分34秒1(この年の安田記念より速い、しかも持ったまま)、2000m通過が1分58秒0(今のコースレコードと全く一緒、2400mのレースで、だよ)、2200m通過が2分9秒9・・・(あの~、ダンツシアトルより速いんですけど・・・。まあ、先頭は変わってますが)。

  結局勝ちタイムが2分22秒2・・・。もう何がなんだか。この超が5個つくほどのHペースで6着ならスゴイでしょ? 
  この馬はイギリスの馬ですが、彼は7カ国で走って(英・愛・仏・独・米・伊・日)、GIを4勝、さらにBCクラシックで2着という素晴らしい成績を残しました。でもやっぱり、JCは特に強烈でした(これってデータかなぁ)。
// 富士山 02/02/06 (水)18:14
http://jse.jpn.org/jrasrch.cgi?kind=father&key=@15294208&mn=378387
-----引用 ここまで-----

 ジャパンカップに来ているため、日本に馴染みがなかったというわけではありません。また、<1990年のジャパンカップ直前に日本人馬主に金銭譲渡され、同競走を最後に競走馬を引退>という形だったんだそう。それから、<そのまま日本のビッグレッドファームに種牡馬として導入された>ということで、ビッグレッドに来たようです。
 前述したように、G1を多数勝っています。競走成績はすごかったですね。ただ、私の印象が薄かったように、やはり種牡馬としては大成しませんでした。

<種牡馬としてはダートグレード競走を2勝したタイキヘラクレスなどを輩出したが全体としては目立った活躍を示せず、2007年に種牡馬を引退。新冠町明和のビッグレッドファームで余生を送っていたが、2012年12月10日、老衰のため死去>

 主な産駒
    タイキヘラクレス(ダービーグランプリ、名古屋優駿)
    スイートイブン(北海道3歳優駿)
    マイネルガーベ(NHK杯2着)
    ノーザンカピタン(新潟3歳ステークス2着)

 ビッグレッドグループの広報誌アワープレジャー2012年8月号名馬ノートによると、別の牧場で繁養されていた時期があり、種牡馬引退後にビッグレッドファームへ戻ったという形。記事の時点ではまだ存命で、功労馬として過ごしていました。スタリオン担当者は「歴代種牡馬の中で最も力強かった」と印象を語っています。
http://www.ruffian.co.jp/site/ourpleasure/ourpleasure.php


■2014/10/17 同父ディープスカイが失敗 G1未勝利でも超良血アドマイヤオーラに期待

2023/03/21:ディープスカイに多少絡むということで同じページにまとめました。

2014/10/17:父アグネスタキオンではディープスカイがまさかの大苦戦。アドマイヤオーラに頑張ってもらわないと…という状況です。
 ただ、アドマイヤオーラははっきり言って、現役時代の戦績はそこまですごくありません。重賞3勝でもG1では3着止まり。正直、地味地味です。
 初年度産駒も僅かに35頭。"GIを勝っていない内国産種牡馬としては、決して少ない頭数ではない"とあるものの、それは「GIを勝っていない内国産種牡馬としては」ですからね。全体としてみると、期待されていない種牡馬であることがわかります。

<飛び抜けた血統馬はいないものの、小倉記念を制したサンレイジャスパーの半妹や、今年の桜花賞に駒を進めたニシノミチシルベの半弟などが初年度産駒の代表格。(略)ホッカイドウ競馬ではコンドルダンスが2戦目で勝ち上がっており、仕上がりの早さも感じさせている>
(【新種牡馬連載】(7)アドマイヤオーラ - 予想王TV@SANSPO.COM 2014.6.9 11:57より)
http://race.sanspo.com/keiba/news/20140609/pog14060911570002-n1.html

 以上のように、やはり繁殖牝馬は低レベルです。
 しかし、前述の通り、アドマイヤオーラ自身の血統背景は良いんですよね。母はビワハイジなのです。

<母は2歳女王に輝き、妹ブエナビスタ、ジョワドヴィーヴルはGIホース。兄アドマイヤジャパンが菊花賞2着、弟トーセンレーヴも重賞ウイナーという輝かしい一族で、現3歳の妹サングレアルもGIIサンスポ賞フローラSを制した。父アグネスタキオンも良血の名をほしいままにしたクラシック血統であり、近代日本競馬の誇る良質牝系の集合体とも言うべき血統構成だ>

 適正は普通に芝専用という評価。<アグネスタキオンは芝向きの産駒が多く出ており、SS系の中でも特に軽快なスピードが武器。母系も明らかに芝での切れ味を持ち味としているだけに、本馬の産駒も芝でこそのタイプが多く出るだろう>となっていました。
 アドマイヤオーラ自身の成績を見ると、4歳春に京都記念(G2)を勝っているものの、古馬になってからは期待はずれな感じ。ブエナビスタは例外なものの、兄弟も早い時期の重賞勝利に偏っています。仕上がりは早いようですが、古馬になってからは勢いが止まるかもしれません。
 私としてはアグネスタキオンの後継者として非常に期待したい馬です。活躍馬を出して一躍人気になりませんかね?

アドマイヤオーラ
サンケイスポーツ評価を勝手に得点化
 血統・適性5 × 繁殖牝馬2 = 10
個人的な好み 9