2024年7月27日土曜日

ディープインパクトの死因、種付け頭数の多さ・高齢種付け説など

■2020/01/21 ディープインパクトの死因、種付け頭数の多さ・高齢種付け説など
■2020/01/21  他にも手術の失敗説、手術は必要なかった説も…
■2020/11/26 アメリカで種付け頭数制限論 ただし理由は…

■2020/01/21 ディープインパクトの死因、種付け頭数の多さ・高齢種付け説など

 現在の人気種牡馬の種付け頭数は以前より多くなっています。これは昔より人気種牡馬により人気が集中するようになったこともありますが、かつての「迷信」が廃れたということもあるでしょう。かつては種付け頭数が多すぎると問題があると考えれていたものの、実は特に科学的根拠がなかったことが判明。種付け頭数が非常に多くなりました。
 …といった理解だったのですけど、ディープインパクト死亡で再び「種付け頭数が多かったことが寿命を縮めたのでは?」といった話が出てきました。で、これに関連する"ディープインパクト、「年200頭の種付けが死期を早めた」批判はまったくの見当違い"(2019年8月8日 8時30分日刊SPA!)という記事を読んでみました。

 記事の大部分はディープインパクトのすごさの話であり、タイトルの話は終わり頃だけ。そして、実際の本文では、競馬評論家の須田鷹雄さんが、議論の分かれるところ…という言い方をしています。
 「高齢の馬に無理に種付けさせたことが負担になったという批判は当たりません。種牡馬の引退は馬によりけりで、20歳を超えても種付けしている馬は普通にいますから。年間250頭ほどの種付けも一年中行っていたわけではなく、繁殖シーズンのみ一日4回ほど行っていた。これが負担になるかについては、競馬関係者の間でも議論が分かれるところです」
  一方、血統評論家の田端到さんは、「ディープが亡くなる2週間ほど前に会ってきましたが、日常生活には支障がない様子」だったと、そもそも種付け頭数が多くて死ぬような状態ではなかったとしていました。


■2020/01/21  他にも手術の失敗説、手術は必要なかった説も…

 田端到さんの方は、別の死因説にも触れています。ディープインパクトは、頸部の痛みを訴えるような異変が見られたため、専門の医療チームを結成し頸椎を固定する手術を行いました。しかし、その後歩行困難となるなど容体が急変。回復する見込みがない新たな頸椎の骨折が判明し「安楽死」の措置が取られています。
  で、死因は手術の失敗説があったみたいですね。「批判のある手術にしても、数か月前から準備して、米国から手術経験のある獣医も呼んでおり、手術が失敗したから死んでしまったという話ではない」と言っていました。ただ、これは手術の失敗を否定する内容ではありませんね。ベストは尽くしたという説明です。
 とはいえ、手術が失敗したから悪いってのは、支持しません。人間の治療でもご外があるのですけど、100%成功するわけではない治療というのはむしろ普通。100%治ると思うのが誤解です。でも、マジでこれで医者や医学を責める人がいますからね。いい加減な手術だったというのならともかく、ベストを尽くしての失敗は致し方ないところがあります。
 次に問題になるのは、手術の必要があったかどうかでしょうね。これについても田端到さんが話しています。「種付けできないほど頸椎に痛みが出ていれば、ストレスで胃潰瘍になり、死んでしまうこともあるので、関係者としては放っておくわけにはいかなかったのでしょう」とのことでした。


■2020/11/26 アメリカで種付け頭数制限論 ただし理由は… 

 Our Pleasure 2019年11月号の岡田紘和さんの巻頭では、ディープインパクトとキングカメハメハが亡くなったことに関連して、実はこの訃報と同時に種付頭数を問題視する意見が出ていることに触れています。種付頭数が多すぎると、特に頸椎への負担は大きいそうで、多すぎが問題あるというのは事実だとのこと。ただ、どこから「多すぎる」と言えるかはわかっていないみたいですね。難しいところです。

 興味をそそられたのは、2019年9月に米国ジョッキークラブで「1シーズンの交配頭数を140頭までに制限すべきではないか」という話が持ち上がったということ。動物愛護精神の高い欧米ならではで、種付け頭数制限派は「ほら見たことか!」と思いそうなところです。ところが、これ、馬の健康問題は主な理由じゃなかったみたいです。
 主な理由は北米における遺伝子プールの偏りの改善だとのこと。50 年前は1シーズンの種付頭数は40 ~ 50が限度と言われていたそうですが、今の人気種牡馬にはその4倍の頭数も珍しくないほど繁殖牝馬が集中。同じ種牡馬の血が広がるのが早いので結果的に近親交配が増えることに。また、一部を除く新種牡馬たちには数十頭しか交配相手が集まらず、十分な機会が与えられていないとの主張もあるといいます。動物愛護とはかなり違う話でした。

 一方、数年前にオーストラリアで「(自然交配に加えて)人工授精を認めるべきだ」と裁判を起こした人たちがいるとのこと。人工授精には種牡馬の種付負担を減らせるなどのメリットがあり、優しいように思えます。ところが、前述の遺伝子プールの偏りが急加速するという問題が出てきてやっかいです。やはりトップクラスの種牡馬を持っている人たちにますます富が集中することも予想されます。また、世界中で同時に認めなければ遺伝的にサラブレッドであっても出走できる国とできない国に分かれてしまう…ともされていました。