2023年11月5日日曜日

馬っ気とフケと発情は違うし、競走能力とも無関係だった?

■2019/04/01 妹萌えの馬がいた!天皇賞馬マイネルキッツ、妹マイネカンナが大好き
■2022/09/23 馬っ気とフケと発情は違うし、競走能力とも無関係だった?


■2019/04/01 妹萌えの馬がいた!天皇賞馬マイネルキッツ、妹マイネカンナが大好き

  Enjoy Ruffian 2009年7月号の厩舎訪問で出ていた国枝栄厩舎の福田好訓(ふくだよしのり)調教厩務員は、当時マイネルキッツについてある心配をしていました。
 キッツの次の出走予定は、宝塚記念。しかし、「次の栗東滞在は、キッツとカンナで行くと聞いているんですけれど、キッツはカンナのことが大好きなんですよ。ただでさえ馬っけが強いというのに......」という心配です。
 このカンナというのは、マイネカンナのこと。マイネルキッツと同じタカラカンナの子、つまり兄妹なのです。馬って近親でも関係なく発情するんでしょうね。

 ちなみに同じ号の「血統マニアック」(藤井正弘)では、妹のマイネカンナの方が先に重賞を勝ったという話を書いていました。
 兄弟で逆になったのは、当時5回目でしたが、ともに古馬で初重賞だったのは、このマイネルキッツとマイネカンナが初めてのケースだったといいます。マイネカンナは4歳4月で初重賞であり、アグネスタキオン産駒としては当時2番めの高齢重賞勝ち星でもありました。どうも晩成型の血統だったようです。


■2022/09/23 馬っ気とフケと発情は違うし、競走能力とも無関係だった?

 マイネルキッツが種牡馬入りしていればその話をしようかと思ったのですが、種牡馬入りしませんでした。じゃあ、「馬っ気」(うまっけ)って話で膨らませようかな?と検索してみると、<実は「フケ」≠「発情」 パドックで外野が兆候を読み取るのは至難【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】>(2022年5月20日 06時00分 中日スポーツ)という記事が出てきてびっくり。私も勘違いしていました。

 この話に行く前に、先に「馬っ気」(うまっけ)の説明を先に。<馬っ気(競馬用語辞典) JRA>では、「牡馬の発情」という説明です。牡馬の場合は、馬っ気と発情はいっしょということになります。
 また、競馬で馬っ気が重視されるのは、発情によって競走能力が落ちると考えられているため…というのも重要です。ただし、今回は「馬っ気」メインの話ではないため、この真偽については、今回話がありません。
https://www.jra.go.jp/kouza/yougo/w129.html

 で、私は牝馬の発情がフケだと思っていたんですが、違うんでしょうね。中日スポーツの獣医師記者・若原隆宏さんの説明を読んでみしょう。
 若原隆宏さんはまず「オークスはG1の中でも波乱傾向の強い競走」と指摘。実際、直近10年で3連単10万超の決着が3度あるそうです。

 理由のひとつは、「距離設定」なのですが、ここはそれ以上説明されていません。これはおそらくほとんどの馬が走っていない芝2400mを若い牝馬が走るために未知数…ということではないかと思われます。
 一方、今回の話のメインは、距離設定と一緒によく言われるという、「5月はほぼすべての牝馬が発情しうる季節にあたる」ことの方。以下のような話がありました。

<人で28日の「月経周期」にあたる用語を動物では「性周期」と呼ぶ。馬は21日。季節性繁殖動物で、おおむね春だけこの周期が回る。北半球では早くて1月に始まり、遅いと8月まで続く。排卵前後の数日は発情に伴って競走能力が減衰すると信じられてきた。厩舎人は、馬のしぐさなどからこれを読み取ったとして「フケが来た」と表現する>
https://www.chunichi.co.jp/article/473356

 やはりフケと発情は同じという理解。なので、私の理解は間違っていなかった感じ。競馬用語辞典を見ても発情とフケは同義とされていました。
 しかし、<近年、繁殖学的な意味の「発情」(=排卵前後)と、厩舎人の言う「フケ」が、必ずしも一致しないことが分かってきた>というのが、今回の話です。

<JRAは研究の一環として2011~13年の3~8月に栗東在厩の現役牝馬の一部を対象に採血。性周期の指標となる雌性ホルモン濃度を調べている。
 ほとんどの馬は正常な性周期を刻んでいた。従来、現役馬は高ストレス下にあるために、慢性的な“生理不順”の状態にあるとの説もあったが、そもそもストレスの影響が小さいのか、栗東の環境が快適なのか、性周期は正常だった。
  同時に、担当者に当該馬が「フケであるか」を問診。突き合わせてみるとこれがてんでバラバラ。統計的にも無関係なことが示された>

 従来フケとされてきた兆候が、実は性周期や発情とは無関係だったわけです。ただし、従来フケとされてきた兆候を読み取ること自体は、依然として重要である可能性を若原隆宏さんは指摘。要するにこれは担当者が「今は走らなそうだ」と察知することであるため、発情と無関係でも競走能力への影響ははかることができる可能性があるためです。
 ただし、パドックで、やれ「腰が浮いている」「担当者に擦り寄って歩いている」と“フケの兆候”を読み取ろうとするのは無理があるだろうとも指摘。タイトルの後半になっていた「パドックで外野が兆候を読み取るのは至難」はそういう意味のようでした。