■2014/9/6 パカパカファームのハリー・スウィーニィ氏「日本は中小牧場に不利」」
■2014/9/6 パカパカファームのハリー・スウィーニィ氏「日本は中小牧場に不利」
最初目にしたときに、かわいい名前だな…と思った北海道新冠町の『パカパカファーム』。アイルランド人のハリー・スウィーニィさんが2001年に開場したものだと知って驚きました。牧場名に限らず、英語や外国語を使ったサービスなどが増えている中、日本人より日本人的で良いセンスの名前です。
このパカパカファームは開場当時からおよそ8倍の広さになり、2012年にはダービー馬ディープブリランテを輩出するなど成功。<【競馬】小牧場の悲哀「走る馬なのに買ってもらえない」>(2013.04.21 河合力●文 スポルティーバ)によると、その成功の理由の一つで、特に力を入れているというのが、「ブラディング」だといいます。
「ブラディング」は重要なビジネス用語のひとつですが、昔ながらのやり方が多い競馬業界ではあまり意識されていないでしょう。記事では、ブランディングを「顧客の関心を高めること。顧客にとって価値あるブランドを構築すること」と説明されていました。
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba_fight/2013/04/21/post_113/
ブランディングを重視する理由は、"日本の競走馬セリ市を見たときに感じた、日本と海外のバイヤーの行動の違い"のせいだとのこと。これは海外よりも日本の方がブランディングを重視する必要があるということですね。
「例えば、海外のセリ市に行くと、ほとんどのバイヤーが最初から最後まですべての上場馬をチェックします。でも日本では、”目当ての馬”しか見てもらえないケースが多いんです。そして、その”目当ての馬”は、まず牧場名で絞り込まれる割合が高いのです。これはセリ市だけでなく、牧場巡りにおいても同様です。
ということは、開場したばかりの牧場や、名の知られていない小さな牧場はつらいですよね。いくら魅力的な仔馬を生産しても、バイヤーの方に見てもらう機会を作るのが難しい、ということですから。そのためにもまず、牧場の印象を残す必要があるのです」
こうした違いは、馬に対する文化の違いではないかとされていました。例えば、スハリー・スウィーニィさんの母国アイルランドでは、小さい頃から馬と触れ合ったり、乗馬を経験したりする人が非常に多く、隣国イギリスでも乗馬文化は定着。そのような中で、自然と馬に対する知識を養っていくと考えられます。
一方、日本は、普通の日本人が普通の生活の中で馬と触れ合う機会はほとんどありません。馬は「身近」な存在ではないのです。このため、自分で馬の良し悪しを考える馬主も少なくなります。結果、ブランド重視になるというわけです。
なお、調教師に購入馬を選んでもらい、名前の挙がった馬を馬主が買うというのが一般的で、中小牧場でも問題ないはず…という反論があるかもしれません。ただ、結局、お金を出すのは馬主であるため、調教師も馬主に納得してもらいやすい、実績のある牧場を優先すると説明されていました。
これは致し方ないところでしょうが、結果として、中小牧場に不利に働くことに。そこで、スハリー・スウィーニィさんは、ブランドに関係なく馬を選ぶことができる調教師にも馬主資格を与える提案をしていました。調教師ならネームバリューではなく、「安価で将来性の高そうな馬」を探すだろうという想像です。
ただ、こうした改革は難しそうな感じ。実際、この投稿を見直した2022年になっても、こうした改革は行われていません。日本では将来的にも変わらなそうです。
逆に言えば、相馬眼があるオーナーにとっては走る馬がそこらへんにごろごろ転がっているわけで、そういう能力のある馬主さんにとっては、おいしい状況なんでしょうね。