■2021/01/28 下駄はかせてG1にしたホープフルSはいらない?
■2021/01/28 葵SはG3不承認・3歳ダートGIは無理…JRAの希望が通らない格付け
■2021/04/07 今度は朝日杯フューチュリティステークスに不要論
■2022/02/02 不要論出た朝日杯勝利馬が圧勝で「最優秀2歳牡馬」に
■2021/10/18 低レベルなら容赦なくG1から降格でイタリアのG1消滅
■2021/10/18 一方で「低レベルでも降格させません」宣言の重賞も
■2021/01/28 下駄はかせてG1にしたホープフルSはいらない?
ホープフルS(当時はラジオNIKKEI杯2歳S)をG1に…としようというJRAの思惑や実際になった頃には批判がありました。G1レベルになにのに無理やりG1にしたとも見られたようです。ただ、そもそも国際的な格付けでは一応ある程度ルールがあり、JRAが自由にできるわけではありません。コメント欄で一般の人が書いたものであり、信頼性には注意が必要ですが、以下のようなコメントがありました。(改行は変更)
<アジア圏の競馬のレースの格付けは APC(アジアパターン委員会)というところで実務的な管理をしています。特にGI昇格については各国も含めた審議になります。JRA「GI昇格!」と言っても好きなようにはできません。
それをIFHAという国際組織(の中の委員会)で、欧州や北米などと共にレーティングの高いレースは最終調整を行います。
よく、「ホープフル昇格は下駄を履かせた」という疑惑がありますが、2歳戦のレーティングは日本は他国と比べて低く(自己申告で)抑えられており、逆に他国から「もう少し上げたら?」という意見をもらうそうです。今回も、阪神JFが上位4頭とも+1修正されました>(nespoさん)
■2021/01/28 葵SはG3不承認・3歳ダートGIは無理…JRAの希望が通らない格付け
このコメント自体は、【JRA】東スポ杯2歳SがGIIに 葵SのGIII格付けは承認されず | 競馬ニュース - netkeiba.comに絡むもの。GIII格付申請していた葵Sは、日本グレード格付管理委員会による審査で承認されておらず、好きに昇格できない…という間接的な証拠になっていました。基準値105.00(3歳GIII)で、パターンレースレーティングは106.42だったが、2020年の年間レースレーティングが104.50となっていたそうです。
あと、「それより3歳限定GIがほしい」といった声が出ていたものの、これもレーティングの問題によって、コメント欄で否定されていました。ただ、この指摘コメントの後でもなお「ダート路線の重賞を増やしてほしい」という声が出ており、自由に決められないということは理解されていない感じです。
<よくここでも希望として挙がりますが、3歳ダートGIはレーティング的には絶望的です。ジャパンダートダービーのPRR(3年間の平均)が109.25、昨年のレートが105.00ですから、GIIにすら足りません。
とにかく「日本のダートはレベルが低い」とみられてるのです。これらを払拭するには、アメリカやUAEなどで行ってレーティングを獲得していくしかないのです>(nespoさん)
■2021/04/07 今度は朝日杯フューチュリティステークスに不要論
前述の通り、ラジオNIKKEI杯2歳S(ホープフルステークス)のG1昇格には批判があったのですが、もともとラジオNIKKEI杯2歳Sは朝日杯より距離が長くクラシックに繋がりやすいため、有力馬が出走しやすいレースとして有名でした。なので、私も昇格には賛成だったんですよ。
そして、そうした経緯があったためか、同じG1となった後はますますホープフルステークスの方から有力馬が出るように。このため、今度は朝日杯不要論が出てきたそうです。皆さん不要論が好きですね~。
<6日、2020年度JRA賞受賞馬が発表され、最優秀2歳牡馬にダノンザキッド(牡3歳、栗東・安田隆行厩舎)が輝いた。無傷の3連勝で東京スポーツ杯2歳S(G3)、ホープフルS(G1)を制したダノンザキッド。前年のコントレイルと同じローテーションで勝ち上がってきていることから、今年のクラシック候補の大本命に見られている。
満票とはならなかったものの、283票中262票という圧倒的な支持を集めた。(中略)2017年にG1昇格したばかりのホープフルSだが、すでに2歳王者決定戦の位置づけとなりつつある。
その一方、同じく2歳G1の朝日杯FSを制したグレナディアガーズはわずか21票という結果に終わった。G1馬同士とはいえ、3戦3勝と4戦2勝の成績を比較すれば、前者に軍配が上がるのは当然と言えるだろう。これだけでホープフルSと朝日杯FSの格を評価すべきではない。だが、今回ダノンザキッドが最優秀2歳牡馬に選出されたことは、過渡期だという見方もできる。
「(中略)最初の2年は朝日杯FS、直近2年はホープフルSの勝ち馬が受賞。ホープフルSの方がクラシックに直結するレースという見方が強くなってきているように感じますね」(競馬記者)>
(19年はコントレイルが3冠を達成……:朝日杯FS「不要説」再燃!? - GJより)
2018年はともに無敗でG1馬となったアドマイヤマーズとサートゥルナーリアが競ってアドマイヤマーズに。アドマイヤマーズはNHKマイルC(G1)を制した一方で、クラシックは無冠に終わり、その一方でサートゥルナーリアは皐月賞(G1)を優勝。これでやはりホープフルステークスの方がクラシック向きだとい流れになったとの指摘でした。
ただ、前述の通り、ふたつのレースの距離の違いからすると、「そりゃそうだろう」という話でしかありません。これにより「朝日杯フューチュリティステークスはいらない」ってことには、ならない気がするんですけどね…。
■2022/02/02 不要論出た朝日杯勝利馬が圧勝で「最優秀2歳牡馬」に
2021年度JRA賞では、不要論が出た朝日杯フューチュリティステークス勝ち馬ドウデュースが251票を獲得して圧勝で「最優秀2歳牡馬」に。ホープフルステークス勝ち馬のキラーアビリティはわずか44票でした。
まあ、クラシックに繋がるかどうかは別として、2歳時点での競走成績で「最優秀2歳牡馬」は決まりますから、こういうことになることは当然あります。ドウデュースは無傷3連勝なのに対して、キラーアビリティは4戦2勝。この結果は当然なようにも見えました。
ただ、おもしろいのが、競馬ファンの投票で2021年の競馬界における各部門の「最優秀賞」を決定する『netkeiba大賞2021』の途中経過では、大接戦だったんですよね。記者投票とは全く異なりました。
東京スポーツ杯2歳S(G2)を勝っただけで実績的には大きく劣るイクイノックスも票を集めており、おかしいと言えばそれまでなのですが、とりあえず、大きく異なる結果だったのはおもしろいです。(非G1馬を最優秀馬に選ぶというのは個人的には好きですけどね)
ドウデュース 10927
キラーアビリティ 10706
イクイノックス 4006
素人目にはキラーアビリティの方が良いと思われたのは、前述のクラシックへの繋がりうんぬんというよりは勝利時のパフォーマンスの良さだと思われます。2着に1.1/2馬身差をつけてのG1勝利でした。過去の戦績を見てわかるように力を出しきれないところがあるものの、力さえ出せれば強いということで期待が逆に膨らむところ。クラシックでも楽しみな馬です。
一方、ドウデュースは別のところでも書いているように、これまで全部接戦での勝利で朝日杯フューチュリティステークスも接戦でした。私は着差以上の強さを感じたものの、ドウデュースが全然強く見えないというのもわかります。
ただし、メンバーレベル的には、ドウデュースが出た朝日杯フューチュリティステークスの方が上ではないか?という見方も出ていました。例えば、朝日杯フューチュリティステークスで3着だったダノンスコーピオンは、萩S(L)のときにキラーアビリティに勝って1着だった馬なんですよね。そのダノンスコーピオンに勝ったドウデュースの方が強いだろう!という単純な話です。
ここらへん、実際には展開や距離・コースの違い、前述のようなキラーアビリティが能力を発揮しきれていないときがある問題などもあって力関係は正直不明。ただ、単純に「最優秀2歳牡馬」ということだけを考えると、やはりドウデュース圧勝というのは、理解できる戦績でしたね。
ちなみに個人的にもドウデュースの方に期待していますし、好きなのですが、幸いどちらもPOGで指名した馬なのでどっちが活躍しても嬉しいところ。ホープフルステークスで惨敗したコマンドライン含めてPOG馬たちが活躍してくれると嬉しいです。…が、そんなうまいことにはならないのが人生。そこそこに期待する程度にしておきます。
■2021/10/18 低レベルなら容赦なくG1から降格でイタリアのG1消滅
格付けが国の思惑で自由自在…という誤解を否定する良い例となりそうだったのが、イタリアのG1消滅です。Our Pleasure2019年10月号のRacing 360(秋山 響)では、まず、イタリアはレベルが低かったわけではなく、かつてはフェデリコ・テシオという偉大な生産者がいて、ノーザンダンサーの父ネアルコやナスルーラといった競馬の歴史でも重要な名馬を生んだ重要国であったことを指摘。そのうえで、以下のように説明していました。
<ついに今年イタリアにおける唯一のG1として行われていたリディアテシオ賞(3歳上牝、芝2000m)がG2へと格下げとなってしまったのだ>
<1980 年代には最大で12ものG1を行っていたが、伊オークスが2007年、伊ダービーが2009年にG2に降格となるなど、徐々に地盤沈下が進行。その後、2016 年までにリディアテシオ賞、ヴィットリオディカプア賞、ジョッキークラブ賞、ローマ賞の4つまでG1が減少すると、その翌年にはリディアテシオを残して全て降格となり、G1消滅へのリーチがかかっていた状況だった>
<G1レースがG2に格下げになるという話は日本では馴染みのないことかもしれないが、いくら伝統国におけるレースであっても、レースのレベルがレーティングに基づいたある一定の基準を下回れば、格下げが行われるのが現状の欧州重賞の格付けシステム。今年のレースレベル次第では、来年格下げの可能性がありますよ、という警告を受けているレースも毎年1月に公表されており、今年の場合、G1では独ダービー(芝2400m)とオイロパ賞(芝2400m)というドイツの2レースがその対象となった>
■2021/10/18 一方で「低レベルでも降格させません」宣言の重賞も
ただ、予想外だったのが、機械的にやっているだけでなく、レースレベル度外視で戦略的に重賞を育てていく…ということもやっているんだそうです。近年の大きな方向性として、長距離路線の強化があるんだそうな。これはまさに「下駄を履かせた」というもの。1国だけが主張するのではなく、関係各国が一致した見解を持つとこういうこともあるみたいですね。
<EPC(引用者注:欧州パターン競走委員会)では、長距離路線の衰退を防ぐため、すでに2017年にイギリスのグッドウッドC(芝16f )をG2からG1、同じくイギリスのクイーンズヴァーズ(芝13f 211y)をリステッドからG2、ドイツのオレアンダーレネン(芝3200m)をG3からG2、アイルランドのラフブラウンS(芝16f )をリステッドからG3にそれぞれ昇格させ、さらに13f 以上のパターンレースについては、自発的でない限り、2022年までの5年間はたとえレースレベルが基準に満たなかったとしても降格させることはないという“セーフガード”を導入していたのだが、今年もフランスの牝馬限定戦であるロワイヤリュー賞を2500mから2800mへと距離を延ばすとともに、G2からG1へと昇格させて、さらなる長距離路線の充実を図った>
大義名分としては、バラエティに富んだレース体系が失われることで、遺伝子の多様性が損なわれたり、生産頭数が減少してしまったり、競馬の魅力が減ってしまったりするのを防ぐため…というものみたいです。賛否両論ありそうですが、秋山 響さんとしては以下のように「問題はあるが支持する」というものでした。
<レースのレベルを客観的に示す重賞格付けを意図的にいじることの是非はあると思うが、かといってオーストラリアのように、長距離路線をほとんど放棄し、昔からの看板レースであるG1メルボルンCを海外からの遠征馬や移籍馬に上
位を占められる(昨年は5着までを独占)ようになっていいのかどうか。個人的には欧州のこのような動きを支持したいと思う>